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兄貴の悦び13

「黒瀬先輩?」  さっき爆笑した箱崎に負けないくらい、ゲラゲラ笑う兄貴。 (屋上にいるのは僕らだけじゃないのに、ちょっとは気を遣ってほしいかも……) 「兄貴、いい加減に笑うのやめてくれないかな」 「だってさ、辰之のお人好しに呆れ果てて、笑いが止まらないんだ。普通あんなことされたら、友達やめるだろ」 「箱崎はちゃんと反省してるし、約束は絶対に守る男なのを知ってるからね。そういう裏表がないところが信用できる」 「黒瀬……、ありがと。だけど黒瀬が思うような、ちゃんとした男じゃないだろ俺は」  例の盗聴器を仕掛けたことを言ってるんだとわかったが、兄貴には内緒にしてやろうと思った。 「箱崎はちゃんとしてるって。もっと自信を持ちなよ。僕の親友なんだし」  見つめ合う箱崎と僕の間に兄貴が唐突に入り込み、うまい具合に視界を塞いだ。あからさますぎる嫉妬に、頬がつい緩んでしまう。 「黒瀬先輩、それじゃあ俺はこれで……」  素早く空気を読んだ箱崎が兄貴の背中に声をかけたと同時に、弁当箱を片手に駆けだした。その俊敏さに、思わず舌を巻いてしまった。 「辰之、わざとだろ」 「え? なにが?」  間の抜けた返事をする僕を見ながら、ベンチに腰かける兄貴の目の白いこと、この上ない。意味がわからなくて、首を傾げてしまった。 「屋上にあるベンチは、恋人同士でイチャイチャするのにもってこいの場所だっていうのを、おまえは知らなかったのか? 箱崎は絶対喜んだに違いない……」 「へぇ全然知らなかったよ。それを知っていた兄貴は元カノと一緒に、ランチを楽しんだんだろうね」 (事前に知っていたから、兄貴をわざわざここに呼びだしたっていうのもあったけどね! 慌てて来てくれて何よりだったよ) 「…………」

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