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特別番外編【Voice14】

「箱崎の視線から、俺に対する嫌悪が滲み出ているのに、それを感じるとなんとも言えない気持ちになっていったんだ」 「若林先輩の言ってる意味がよくわからないんですけど、嫌悪感が出てるのって俺だけじゃないと思いますよ」  若林先輩の視野の狭さに思いっきり辟易しながら指摘したら、「そんなの知ってる」なんていうあっさりした返事をされた。 「じゃあ俺との違いはなんですかね?」  得意げな顔で返答されてしまったせいで、俺の中にある我慢が刻々と限界に近づいていく。 「なんて言ったら伝わるんだろうな。ん~、誰よりも俺のことを最低最悪で嫌ってる感じ……」 「俺の感情が若林先輩に、間違いなく伝わっているようで嬉しいですー」  表情に出るようにウンザリ顔を作り込み、棒読みで告げてやった。 「そうだよ、その塩対応がすげぇいいんだって!」 「は?」  いきなりテンション爆上げした声色に思いっきりビビッて、逃げる感じで後退りしてしまった。マジで気持ち悪い。 「箱崎にそういう態度をとられると、背筋がゾクゾクするんだ」  正直なところ返す言葉がない。というか見つからない。俺が若林先輩を嫌えば嫌うほど、悦ばせてしまっている事実に、めまいが止まらない。  不意に黒瀬先輩のセリフが脳内を流れる。 『誰かに後ろ指をさされることが平気な人間は、まずいない。あえてその選択をする強さを持つ若林先輩が、俺としては羨ましいなって』  打たれ強さがあるわけじゃなく、ドMの本性ゆえにあえて自分を追い込んでいたことを、今すぐにでも黒瀬先輩に伝えたかった。そして若林先輩に対する尊敬の念を消してもらいたい。 「なぁ箱崎、俺たち付き合わないか? どうせ黒瀬弟とはくっつけないんだしさ」 「お断りしますっ! 俺にだって選ぶ権利くらいあるでしょ」 「そうやって逃げられると、追いかけたくなるよな」  背中を向けないように、じわじわ後退りを続ける。腕の力は若林先輩のほうが上。羽交い締めにされたら、一巻の終わりだ。死亡フラグしか未来が見えない。 「アンタは俺の趣味じゃない。まったく逆方向なんだよ、黒瀬を見ればわかるだろう?」 「だから?」 「それにキモイのは嫌なんだ、そっちの世界に俺を巻き込まないでくれ」

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