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特別番外編【Voice20】
跨っている腰をあげかけると、若林先輩の太い腕が俺の首を慌てて掴んで、不意に動きを止めた。
「慎太郎の大っきぃち〇ぽがほしい!」
「つっ!」
必死な形相で強請られたセリフの衝撃に、今度は俺の躰が震えてしまった。首を掴んでいる若林先輩の腕に力が入り、顔に近づけられる。名前呼びに慣れていないせいで、異常なくらいに心臓がバクついた。切なげな表情で頬を染めながら、むせび泣いて俺に縋る若林先輩にキスしたい――。
「慎太郎お願い、俺から離れないでくれ……。こんな俺を嫌がらずに相手をするおまえが、すごく好きなんだ」
「な、なにを言って…るんですか。若林先輩が好きなのは、俺のブツでしょう」
(失神するほどの快感を与える俺のを欲しているから、きっとそんなセリフが出るんだ……)
「それを含めておまえが好き。慎太郎が大好き」
若林先輩の熱烈な愛の告白を、『嘘つき』なんて言葉で否定しながら『そんなことを言うアンタなんて、俺は大嫌いだ』と言えば、性癖的に罵るタイミングとしてはバッチリだろう。
「俺はアキラ先輩のこと――」
嫌い…気持ち悪いんだよ…大嫌い。他にもたくさんの言葉が脳裏をよぎったのに。
「……好きだ」
多分、微妙な顔で伝えたせいだろうか。若林先輩は目を瞬かせながら、口を開けっぱなしにした。
「慎太郎?」
俺の口から好きの二文字が出るとは思ってもみなかったのか、若林先輩の頬がさらに赤くなった。俺の首に絡む腕もぶわっと熱を帯びて、じわじわと体温を与える。心地いいそれに導かれる形で、若林先輩の疑問を解消しようと言の葉を告げる。
「アキラ先輩が好き、みたい」
「黒瀬弟よりも好き?」
間髪入れずに問いかけられたものは、詰まることなく返事ができるものだった。
「黒瀬よりも好き。だと思う」
こんなに好きなのに、それを見せられないのは、すごくもどかしい――。
「ヤバっ。その告白だけでイっちゃった。心だけじゃなく、俺のち〇ぽにまで、ぎゅんときた!」
「そうですか、それはよかったですね」
俺のぬるい声は思いっきり棒読みなのに、目の前には満面の笑みがあった。
「今日は記念日だ。たくさんイった甲斐がある!」
「ひとこと言いますけど俺、アキラ先輩のをまったく触ってないですよね。それなのに、たくさんイったっていうのは」
「おまえに感じさせられるたびに、何度も達したってこと。替えのパンツ持ってきててよかった」
無邪気に笑いかける若林先輩に、俺はなす術がない。俺の考えつかないことがぽんぽん口から飛び出てくるし、行動にも表れる。そのせいで思いっきり翻弄される側になってしまうんだ。
「若林先輩がドロドロになっても、大丈夫ってことですよね。覚悟してください」
想いを打ち明けたあとに交わされるキスは、今までした中で一番熱いものになった。もちろんその後におこなわれた行為も、同じものになるはずだったのに――。
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