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「やべぇぇぇ、遅刻するぅぅ!!」
おはようございます。上野咲舞です。
ただいま、学校に向かって全力疾走してます。
「セーーーフ!!」
門が閉まるのを滑り込むようにして入り、丁度チャイムが鳴った。
ふぅ、なんとか間に合った。
入学して一週間も経ってないのに遅刻なんて流石に笑えない。良かったと一息ついて、教室に向かう。
──ガシッ
「あん?」
「おはようございます」
誰かに肩を掴まれたので振り返ると、眼鏡を掛けた男子生徒がにっこりと微笑んでいた。
「遅刻ですよ。学年クラス名前、ここに書いて下さい」
「はぁ!? チャイム鳴る前に校門入ったよね!?」
「チャイムが鳴る5分前に校門に入っていなければなりません。ほら、生徒手帳に書いてますよ」
「ほんとだ、テヘペロ☆ ……って、そんなもん知るかーー!」
「あっ、ちょっと……!」
突き付けられた生徒手帳をベチッと地面に叩き落す。
こっちは駅から必死で走ってきたのに遅刻になってたまるか!
無視して教室に行こうとするが、眼鏡の生徒は目の前に立ち塞がって行かせまいとしてきた。よく見ると、腕に『風紀』と書かれた腕章をつけているではないか。風紀委員、面倒なのに捕まってしまった。
「こうなったら力尽くで……」
「何をしている」
眼鏡の生徒とは別の凛とした声が聞こえた。
さらに風紀委員が増えたのかよ、と舌打ちしそうなのを堪え、声のした方を向き──目を見開いた。
「生徒会長! この生徒が遅刻したのにも関わらず抵抗して……」
「何だと?」
二重でキリッとした大きな目は俺を睨む。なまじ顔が整っているせいで、その眼光は鋭く冷たい。
けど、なんというか……
「すっげぇ……タイプ!」
「は?」
突如現れた美人に俺の体は歓喜で打ち震える。
朝からこんな美人に会えるなんて……!
んばっと生徒会長の手を掴む。
「名前教えてください! 俺は上野咲舞って言います! 」
「…………」
「あと電話番号! あ、俺の教えましょうか? てかLIMEやってます?」
「いい加減に……」
「今度お茶しません? オススメのcafeteriaがあるんだけど」
「しろ!!」
「ぶっ!」
腰に手を回す前に、顎に鉄拳を喰らう。
勢いのあまり「うべぇっ」なんて変な声をあげて地面に倒れてしまった。
あががが、顎の感覚が……
「お前、上野と言ったな。反省文を書き上げて生徒会室まで持ってこい。分かったな」
「いてて…はんせい…ぶん?」
ベシッと紙みたいなのを顔に叩きつけられた。顔から剥がし見てみると、『反省文』とでっかく主張された文字に、マス目がぎっしりとある。それが10枚ほどホッチキスで留められていた。
「こんなのより生徒会長の電話番号が欲しいです!」
「ほう、そんなに退学になりたいか」
「全力で書かせていただきます!!」
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