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そこから記憶はない。あの後、たぶん最後の気力を振り絞って親が帰ってくる前に処理はしたんだろうけど、それも曖昧だ。 俺も栄もどっちも精魂疲れ果て、泥のように眠り目覚めた時はすでに朝で。とりあえず、身は清められていたし親に何も変わった様子はなかったから大丈夫だろう。 ただ、栄と顔を合わしても昨日のことは一切触れず何も言わない。今日が休みで良かったな、みたいな会話して終わりだ。それから栄は部屋にこもりっきりで、俺も痛む腰にベッドで療養中である。 大人しく今日一日は寝てようと思った。 だが、しかし。そんな平穏な一日なんてものはなく、すぐに崩されることになる。 ──ピロン 終わりを告げるには軽やかすぎる音が鳴り、なんの気になしにスマホを取った。が、表示された名前を見て固まる。 『宝木 睦月』 無視しようかと思った。無視したいと。でも、そんなことをすれば俺の命はない。 ごくりと唾を呑み込み、意を決してLIMEを開く。一文で簡潔に書かれた言葉は、今から来い、ということだった。こちらが返事をする前に画像が送られる。 「……う、ぇ…」 表示された写真に目を向く。 そこにはあられもない姿でピースをする男二人が写っていた。 それは明らかに、昨日、睦月らに撮られた写真で。 続けて送られた、五分以内に来なかったら拡散するというメッセージにコンマ一秒で用意した。

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