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俺を置いていった腹いせに、「昨日、栄がグラドル見とった!」と暴露したら皐月さんが般若と化し栄は連れ戻された。 その時の栄がこの世の終わりみたいな顔してたけど、数分の間に何があったのだろうか。 まぁ、そっちはいいとして……睦月の機嫌が一向に直らず、食事中も一緒に登校しているときも無言。さくさく歩いて俺を置いていくわ、話しかけようとしても無視で非常に空気が重い。 結局、学校に着くまでの間一言も喋らなかった。 靴を履き替え教室に向かう睦月の後ろを慌てて追い、このままでは駄目だと意を決して口を開く。 「あっ、あのさ……睦月…」 「話しかけんな」 一刀両断。扉をピシャリと閉めて睦月は教室へと入っていく。 「な……」 ぶるぶると肩と拳が震えてくる。踵を返して自分の教室へと向かった。 ──ガラッ!! 「なんなんあいつ!!」 「お〜、荒れてんなぁ」 勢い良過ぎるまでに扉を開け、教室に入った俺に声を掛けてきたのはクラスメートの穂高だ。 「聞いてくれる? なぁ、聞いてくれるん?」 「真顔で寄ってくんな。キモチワルイ」 「なんで!? なんで皆して俺のことボロクソ言ってくるん!? 俺が何したって言うねん!!」 「あーもー分かった。分かったから落ち着けよ」 ポンポンと肩を叩かれ宥められる。全然怒りは収まらないし騒ぎ立てたいけど、少々周りの目が痛いことに気付き自重することにした。 「だって、話しかけんなって酷くない? 朝も殴られたん俺やしそもそもあいつが……」 そこまで言い掛けてハッと言葉を飲み込んだ。 俺と睦月が付き合っていることはまだ誰にも言っていない。と言うか、言えるわけがなくて睦月の方からも口止めされている。 「いっつも思うけどさぁ、お前らって付き合ってんの?」 「は、はぁ!? んなワケあるかいっ、おっ男同士やぞ何言い出すねん穂高あほボケこら……あっ、すいまへん痛いれす」 頬っぺたを思い切りつねられた。睦月よりは断然穂高のが遠慮してくれているが、なんで俺の周りには暴力的な人が多いの。 つねられた頬をさすりながら、「どうせ俺なんか……」とネガティヴモードに入ったら穂高に鬱陶しい、と一蹴されてしまった。俺に優しい人はこの世に存在しないのだろうか。 「だってさ、家が隣同士で幼馴染で毎朝お前が起こしに行くんだろ? それだけで、どこぞのやっすいギャルゲーかよって感じだし、お前が毎回睦月が睦月がって騒ぎ立てるのもこっちはカップルの痴話喧嘩聞かされてるみたいで心底殴りたい気分になるんだけど」 「なんで穂高が怒ってんの……。大体、自分には彼女おるやん!」 そう、こいつ穂高敦(ほだか あつし)にはムカつくことに彼女がいる。 しかも、男子生徒なら誰でも憧れるマドンナ的存在の立花さんと! まぁ、穂高もちょーっと女子から人気が高めであるし、分からなくもないけど別に美男美女のカップル羨ましいだとかそんなことは一切思わないけどね。うん、普通のカップルまじで神々しいなんて思ってない。 「円も彼女作れよ」 「お前今鼻で笑ったやろ」 「うん。でも、ほんとオススメ。癒されるしな」 癒されるどころか、傷増えていくばっかりやけどな。とは、口が裂けても言えないので心の中で呟く。 うー、俺も普通のカップルみたいにとはいかなくても少しぐらい優しくされたい!

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