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電車からそう遠くない距離にある、みどり遊園地。
規模は大きくはないが、自然の中に作られていることもあり、緑とアトラクションの鮮やかなコントラストがまるで非日常的で夢の世界を演出している。長期休みの時期になると、夜には派手な電飾を施したナイトパレードなんかをしており地域では結構人気なテーマパークだ。
「遊園地なんて何年ぶりやろ」
「さぁ、前行ったんいつやったけなぁ」
お母さんとお父さんに手を繋がれて嬉しそうに鮮やかなゲートを潜る子供を見て微笑ましくなる。休日だと言う事もあり、入り口だけでかなりの人はいるがもうすでに楽しい。
「あ、穂高や! こっちこっち!」
遠くからでもよく分かる穂高の存在感。イケメンってこういった時分かりやすい。だって、女の子がきゃーきゃー言い出したらそこに大抵穂高はいる。ムカつくからわざと大きな声で呼んでやったら、小走りでこっちに向かってきた。
「お前手ェ振んのやめろよ。男同士で遊園地とか寂しい奴だなーって思われるだろ!」
「実際そうやん」
「うるせぇ! 俺は彼女いるっての!」
チッ、恋人自慢しやがって。
「初めまして、やんな。円の兄の栄です。今日は急にごめんな」
「あ、いえ。こいつのクラスメートで穂高敦って言います」
言いながら、俺と栄を見比べる。その顔、言いたい事はなんとなく分かるぞ。
ちょいちょいと呼ばれたので、穂高に顔を近付けると穂高は栄に聞かれないように小声で話し出す。
「おい、本当にお前の兄貴か? 美形だな」
「そう? 俺の方がイケメンやろ」
「ハッ」
「お前、今、鼻で笑ったな!!」
「はぁっ、……遅れて、はぁっ…スミマセン!」
「日吉くん」
俺と穂高が揉めている所に、栄の友人が着いたらしい。走ってきたのか息を切らしており、膝に手を当てて呼吸を整えている。
「そんな急がんでも大丈夫やで。こっちが急に誘ったんやし、ごめんな」
「いや、そんなことは……と、あれ?」
息切れが収まったのか顔を上げた。優しそうな顔立ちをしていて、色素の薄いふわふわの髪がより一層優しくみえる。身長もすらっと高くて、悔しいが、間違いなくイケメンの部類に入るだろう。
「あっ、言うの忘れとったな。今日、実は遊園地のチケットが余ってて、僕の他に弟とその友達もくる予定やってん」
「弟さん? えっとどっちかな」
「あ、俺です。弟の円です」
「どうも、日吉 元親 (ひよし もとちか)です。椎名さんとは講義が同じで仲良くさせてもらっています。君のことをたまに話に聞くよ。話に聞いていた通り、良い子みたいだね」
「え……」
にこりと優しげに微笑む日吉さんだが、隣にいた栄が怪訝そうな顔をする。
「ええ? 僕がいつこいつが良い子みたいな話した?」
「弟の話をしている時、君は優しい顔をしているから」
「やさ……。それ多分誤解やで」
「そうかな? でも、僕の想像通りだよ。今日はよろしくね」
な……
なんっって、いい人なのだろう!!
ちゃんと優しい人間もこの世に存在してたんや。いや、この計りしれない優しさのオーラを纏っている人は最早人智を超えている。
「神様や……神様みたいな人がおる!」
「お世辞に決まってんだろ。どうも、穂高敦です。円のクラスメートッス」
「これはこれは、モデルかと思いました。かっこいいですね。羨ましいです」
「あ、ありがとうございます」
「お世辞に決まっとるってー」
「お前、後で一回殴らせろ」
睦月と穂高は、一度、日吉さんの爪の垢でも煎じて飲めばいいと思う。
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