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「皆集まったことやし、そろそろ入ろうか」
「パーッと遊ぼ! やっぱり最初はジェットコースターやんな!」
「他の人の意見も聞けよ」
「ジェットコースターですか。僕乗ったことないんですよね。楽しそうです」
「えぇ、そうなんですか?」
「と言うより遊園地に来たことが無かったもので……」
申し訳無さそうに言う日吉さん。遊園地に来たことがないって珍しいと思う。家が厳しかったとかだろうか。
「えっと、乗りたいものとかあります?」
「うーん、詳しくないのでお任せします。あ、でも出来るだけ沢山乗り物に乗ってみたいです」
「よっしゃ! じゃあ全部回ろう!」
「全部!? 流石に全部回るのはキツイだろ……」
「体力さえあれば大丈夫やろ。それとも、穂高は体力無いとか? あーあ、これだから都会のモヤシっ子は……」
「お前だってずっとこっちに住んでんだろ。いいぜ、そこまで言うなら勝負してやるよ」
「お、面白そう! 乗った!」
やっぱり遊園地に来ると、さっきまでの暗い気分がすっ飛んでいく。本当は睦月を楽しませる為に来るつもりだったのだけど、たまにはこういうのも悪くないなと思う。
睦月を楽しませるのは後になってしまうが、今日はせっかく来たのだから自分が楽しむことを優先させよう!
「ふふ、仲が良いですねぇ」
「ホンマに……。日吉くんもこの馬鹿に無理に付き合わんでいいで」
「いえ、大丈夫です。いっぱい遊ぶぞー、えいえいおーっと」
「あはは、なんなんそれ」
「ワクワクしてますから。それに、貴方もいますし」
「え?」
穂高と最初に乗るアトラクションまで競争してたら、後ろの二人と距離があるのに気付き大声で呼ぶ。
「栄〜、日吉さ〜ん! 早く早く!」
「あ、もうあんな所に。若いですね〜、ささっ、行きましょう」
「え、あ、うん」
二人の会話は離れていたから聞こえない。
そして、目の前の楽しさに気を取られていたせいで、この時から俺たちを見つめる視線があったというのに、俺も栄も浮かれていて全然それに気付かないのだった。
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