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目的地の駅から二駅ほど手前で途中下車したかと思うと、引きずられるようにして連れられた駅近のホテル。そのホテルのベッドであられもない姿を晒しているのは紛れもない僕で。抵抗も全くの意味を成さず、剥ぎ取られた衣服はベッドの下に散乱している。足を大きく開かせられ、後孔に皐月くんのモノを咥え込んでいる状態を温度のない瞳に見下ろされ、羞恥に涙を呑んでいた。
「あっ、ぐ…ハァッ、んぅ……っ」
大して慣らされずに挿れられたため、快感よりも痛みの方が強い。脂汗を額に滲ませながら、中の異物感をどうにかやりすごそうと息を吐く。が、相手は構わず揺さぶろうとするので苦痛に顔が歪んだ。
「痛っ、うっああっ、あかっ…動かん、といてっひっ…」
「気持ちが良くなってしまったら罰にならないでしょう」
罰、罰って何やねん? 僕はただ円に……。
しかし、行為中に考え事は許さないと言った風に、皐月くんのモノが中を強く抉った。
「あっ、あぁ!? ひっ、皐月くっ、そんなっ、ああっ」
「何だ、痛い痛いと言いつつ感じてるじゃないですか」
ドMが、と耳元で蔑まされぞくぞくっと産毛が総毛立つ。だって、そんなにガンガンに突いてこられたら、良いところももれなく擦られて、苦しいはずが変になってくる。少しでも痛みより快感を拾おうと身体も必死で、痛みさえも快感に変わりそうだ。皐月くんが罵ってくるほど自分はドMじゃないし、こんな暴力的なセックス嫌なはずなのに、ここ数年の間で皐月くんによって開拓された身体はすぐに従順になりよる。
「凄い顔してますよ貴方」
「ふぁあっ、らって…!こんなんっ、ああんっ、あ゛っあっあっ」
「貴方にとってご褒美だったかもしれませんねぇ」
言いながら僕の腰を抱くと滅茶苦茶なピストンを繰り返す。体重をかけられ、押し潰されそうになるもその圧迫すら気持ち良い。大分、自分の頭がおかしくなってきてるのを何処か客観的に感じていた。
「一度、中に出します」
「うぁんっ、やっあ゛っ、中はっ、嫌ぁっ、お゛っああっ!」
皐月くんの宣言通りになるのはいつものことだし、今更拒否したところで無意味なのは分かっている。それに、長年調教されてきた身体は実のところ、皐月くんの精をなによりも欲している。疼く中に問答無用にぶちまけられたい。それが本音と言えば本音だが、男としてそれは如何なものだろうか。恥ずかしいのと悔しいので、今でも嫌だとかやめてしか言えない。皐月くんを逆撫でする発言と知っていながら。──あぁ、ほら。僕が嫌がる素振りを見せるから意固地になって、絶対に中で出そうとばちゅんばちゅんと腰を振りたくる。
腰に回った逞しい腕にはぎゅっと力が入り、僕の足を高く抱き抱えて。絶対に逃げられへん体勢。
皐月くんの動きが性急になり、中を穿つ剛直がビクビクと波打っている。あっ、くる……! と密かに期待で胸を膨らませているその時、
場にそぐわない無機質な音が、僕らの獣のような行為に水を差した。
──Prrr、prrr……
「ハァッ、はぁっ…あ…?」
音はどうやら僕の鞄から聞こえてくるもので。皐月くんは動きを止め、そちらに目を向けると舌打ちし、一度僕の中からペニスを引き抜いた。ずるり、と引き抜かれた際「んっ」と声を上げ、軽くイッてしまったのは内緒だ。
ベッドから降りた皐月くんは僕の鞄を探り、着信音が鳴り続けるスマホを取り出した。そして、画面を見つめる皐月くんの眉間に皺が寄せられる。
「……腹が立ちますね」
忌々しげに呟かれた言葉に、え、と返す余裕もなくスマホを投げて寄越された。画面を見ると、なんと、日吉くんの名前が表示されている。
皐月くんが表情を変えないまま顎をしゃくってみせた。それが何を意味するか理解し、顔を青ざめる。嫌やと口にするが、早くしろ、と恐ろしいほど冷たい声に急かされ、恐る恐る通話ボタンをタップした。
『──もしもし、椎名さん?』
「ひ、日吉くん? あ、なにどないした……?」
緊張感の中、こちらの状況を絶対に悟られるわけにはいかないので、平然を装い電話に出る。すると、ギシッとベッドに上がり込んでくる皐月くん。唐突の制止を食らった皐月くんのペニスは硬く張り詰めたままで、僕の片足を引っ張るとアナルの入り口に先端をあてがう。──まさか。
『帰り際、体調が悪そうに伺えましたので。大丈夫ですか?』
「あ、あぁ、大丈っ、ぶぅっ…ッ!?」
あてがわれた熱が進入してくる。張り出したカリで入り口と前立腺のあたりをごりごりと刺激され、日吉くんと話しているのに、声が出そうになる。慌てて口元を塞ぎ抑制したが、この刺激は駄目だ。
『 ? どうしたんですか、声が上ずってるような……本当に大丈夫なんですか?』
「うっ、うんっ…ぁ…! っ、ひ、大丈夫やから…ーー〜〜ッッ…!!?」
『椎名、さん!?』
ごちゅん、と鈍い衝突音が腹の中で響いた。皐月くんの亀頭が、行き止まりの結腸の弁に突き当たったのだ。ずろろっ、と入り口まで引いて前立腺を押し潰しながらもう一撃。冗談なんかじゃなくて、息が止まった。だらぁ、と口の中から唾液が溢れ、僕のペニスがぶしゃあと透明の液体を吐き出す。ついでといった風に、精液も。
普通逆やろ、だとか、いやまず透明の液体出したら終わりやろとか日吉くんとの電話は、と色々頭ん中で駆け巡ったけど、
もう、消し飛んだ。
「ーーッ、あっ、ハァァッ! 無理やっ、てぇ! いぐぅうっ、イくっ、いっイったぁっ、ひあっんああああっ!」
『……椎名さん、貴方…』
身も蓋もなく叫ぶ僕に流石の日吉くんも何が行われているのか気付いたのだろう。電話越しに日吉くんが息を呑んだのが聞こえ、耐えきれずスマホを手からすべり落とした。
どちゅっ、ごちゅ! ごち゛ゅん!性懲りも無く結腸をど突かれて、イキ過ぎた快感に四肢が痙攣する。中で突かれてイくの、なんて言うんやっけ? め……メスイキ?
「あ゛ぁっあ! 止まっ、イってうからぁ! もぉっ、イキたくないいっ、許してぇっ、あかんんっ!だっ、あぐぅっ、あ、めしゅイキ止まらんくなるぅうぅっ!!」
「……っ、貴方、自分がどれほど卑猥な台詞吐いてるか分かってます? 電話、まだ繋がったままですよ」
切れやボケ! と罵声が飛びそう、意識はほぼ飛んでいる。もうやめてくれ頼むから。涙が止めどなく溢れてガチ泣きしても、鬼畜に全パラメータを振っている彼はどうしたって止まってくれない。
「ふ、ぐすっ、もう嫌やぁ、やめてってばぁっ、ふぐっ、う゛ぇっ、許して…ぅぐ…、んッ、ぁあっ!」
「そうですねぇ、貴方が誰のものなのか、宣言して頂けたらやめて差し上げますよ。今すぐに」
「ふっ、あっ、ああーー…」
前述で申した通り、僕の意識はほとんど飛びかけているため、電話中の日吉くんに全部聞かれているのなんて気にしていられなくて。
こんな強烈な快感、耐え切れるわけがない。止まって欲しい、ただその一心で口を開く。
「あっ、ふあぁ….僕は、た、宝木、皐月くんのもの、です…。ぁ…僕の全部は、皐月くんに捧げ……んっ、んぐぅっ!?」
全部言い切る前に、頭を掴まれディープキスをされる。ぬるりと滑り込んでくる舌が咥内を陵辱し、唾液を強制的に飲まさせられる。他人の唾液なんて最悪だと思うのに、覚えさせられた皐月くんの味は今や美味しいと感じてしまうほどで。僕が全部嚥下したのを確認すると、スッと顔を遠ざけた。皐月くんの手には僕のスマホが握られている。
「──という事ですので、粗末なモノを一人で慰めているところ大変申し訳ないんですが、私と栄さんは“恋人”なので、貴方の入る隙など一ミリも無いことをお忘れ無きようお願いしますね。日吉元親さん」
ピッと通話を切り、雑にベッドの端へ放り投げる。次いで、腕を引っ張られると、繋がったまま後ろを向かされた。上半身はベッドに突っ伏し、尻だけを高く上げた体勢。腰を鷲掴みにされると、再び律動が開始される。
え、嘘やん、止まってくれるって言ったのに! 待って、
「さてと。誰にでもエロ声を聞かせる節操無しにはそれなりの、仕置きが必要ですよね……?」
「うっ、嘘……話とちゃうっ……止まってくれるって!」
「この間、実弟の前で痴態を晒したかと思えば、次は大学のご友人ですか………このスベタが!!!!」
これ以上ないくらいに張り出したカリが、直腸を開き結腸にぐぽっ、とハメた。瞬間、目の前にバチッバチッと花火が散る。口から漏れたのは、潰されたカエルのような醜い声。
もうやだこいつ。
最早、罵る理由なんて何でもいいんじゃないか。
「貴方が誰のものか分からせてあげますっ、よ!」
「お゛っ、ぉぐッ! おっ、ヒ、ぎっーー…」
「……っは、出しますよ。貴方の中に、私を教え込ませてやる……!」
ラストスパートだとばかりに容赦無く突かれて、息も絶え絶えだ。必死にシーツにしがみついているので、せっかく整えられた真っさらのシーツはぐしゃぐしゃ。顔もぐしゃぐしゃにしながら、今度こそ誰にも邪魔されずに奥に放たれるであろう熱を耐えて待つ。中で皐月くんのペニスがドクドクって限界を告げている。も、もう来る……
直感してすぐ、一番深いところに皐月くんの亀頭が食い込み、柔らかい肉に熱々の精子をぶっ叩き込まれた。その衝撃に僕も、ぐりぃんと黒目を上に向けて、イク。おびただしく吐かれる熱に肉穴が痙攣する。すご…ぶびゅーぶびゅーって、マヨネーズちゃうんやから……。
「貴方の言葉のセンス、たまに萎えるのでやめてもらっていいですか?」
それ言うんやったら今突っ込んでるモン、ホンマに萎えさせてから言え。
ああ、くそ……ホンマに疲れた。視界がぐにゃりとぼやける。
──バチンッ!!
「っ、ぎゃっ!!」
意識を白濁の中に飛ばそうとするも、尻たぶを思いっきり叩かれ痛みに覚醒する。躊躇とか慈悲とか無いのか、こいつには。
「何勝手に終わらせようとしているんですか。私はまだ一回目ですよ」
「ヒッ、む……むり…」
力なく首を振るが、当然許されるはずもなく。まだ一回目とのたまう彼に、この後二回も三回もあるのだと思うと今度こそ気が遠くなった。部屋の退室時間は約二時間後、それまで僕は生きて出られるだろうか。
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