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有り難いは有り難いが、この状況は全く有り難くない。僕はもう少し抵抗することを学んだ方がいい。トイレの個室に押し込まれた時点で思っても、時既に遅し。ガチャン、と背中から鍵をかける音が聞こえ、この先の末路に目を覆いたくなった。 「ちょっと、皐月くん、嘘やろ……」 ここどこだと思ってる? 大学のトイレです。淡々と答える皐月くんと青ざめる僕。いくら三時間目が始まった時間と言えども、利用する生徒は少なからずいる。授業に行ってる生徒はともかく、僕らのように空きコマの生徒とかな。冷静沈着で堅物の宝木皐月くんは、クールで知的でかっこいいと評判だが、致命的にモラルが欠如してる。 服の下に皐月くんの手が忍び込み、僕の脇腹を撫でた。それだけで、鈍く甘い痺れが背筋を這う。 「あっ、あかんってぇ……」 「……軽く撫でただけでだらしのない。こんな身体じゃ生きにくいのでは?」 「だっ、誰のせいやと……!」 撫でていた手が徐々に上に上がっていく。押しても引かない腕に、背丈は同じくらいなのに筋肉量とか諸々が違うのだと知らしめさせられる。皐月くんは細身に見えて意外とマッチョで、比べて僕はヒョロガリ。これが高校の時、運動部だった者と文化部だった者の違いか。普通に悔しい。 「私のせいですね。貴方の身体をこんな風にしたのは。私が触れると可愛らしいぐらいに反応を示す」 「っ……」 平たい胸を皐月くんのゴツゴツした手のひらが撫でる。時折、わざとらしく乳首を擦るので、僕は必死に唇を噛んだ。 「そうやって、噛み殺していればいいのに。どうして聞かせてしまうのですか」 ちゅっ、と耳の下を吸われ、皐月くんの低く掠れた悩ましげな声が耳に吹き込まれる。もう、僕は泣きたくなった。白状しよう、皐月くんの声がとてつもなく好きなのだ。僕だってこんな色気のある皐月くんの声、誰にも聞かせたくない。そういうことを彼は言ってるのだろうか。 「……も、もう、聞かせんって…。皐月くん以外には……」 「ふん、貴方は口だけですからね。信用に値するかどうか」 いや、そもそも皐月くんの仕出かしたことだし、不可抗力ってやつですし。やっぱり理不尽だと思うけど、僕の立場はずっと弱い。胸を弄ってる手とは逆の手が僕の腰を掴み寄せ、より密着する。その時、太腿にごりっと硬い感触があり、それが何なのかすぐに思い当たってしまうあたり困惑するしかない。 「……我慢出来んの、その、帰るまで」 押し付けられる熱にドギマギしながら、ボソボソと小声で言う。こんな誰が来るか分からない状況で反応出来るなんて、皐月くん、変態すぎんか。それと、君って潔癖だからこういう所でするのは嫌なはずでは。 「貴方の声でこうなったので、責任とって貴方が何とかしてください」 「ええ、思考回路大丈夫か?」 あと語彙力も一気に低下したぞ、というと今度こそ無理矢理この場で犯されそうだからお口チャック。出来るだけ被害は少ない方がいい。僕はそう結論付けると、頭の中を一旦クリアにした。 「皐月くん、そこ座って」 皐月くんの胸を軽く押し、便座に座るよう促す。ふてぶてしく腰を下ろした彼のスラックスの前がゆるく隆起しているのに、頬に熱を持つのが分かった。なんで僕がこんなことを、と思っていたら一向に進まない。勢いが大切だ。屈んでトイレの床に跪いた僕に「汚ね」と頭上から声が掛かったがうるさいと一蹴した。 それにこれからもっと汚いことをするのだから、トイレの床ぐらい気にしていられるか。 皐月くんの足の間に顔を突っ込んだ僕はベルトを緩め、中から皐月くんのモノを取り出す。半勃ちといったところで、それでも一般成人男性のフル勃起ぐらいの大きさと硬さはある。これからもっと成長するのだから、男としては少し妬ましい。 「ちゅっ、ん…」 唾液を分泌させ、口内を潤す準備をしながら先端に口付ける。膨らんだ先端だけを口に含み、舌でひくつく穴を中心に刺激するとじゅわりと先走りが漏れた。唇だけで吸い付いてくぽくぽと音をさせると、無表情に見下ろしていた皐月くんの眉間に皺が寄る。見た目では分かりにくいが、これは感じている証拠だ。そのことにほっと安心しつつ、カリ首の裏を舌でなぞった。ここの部分は特に臭いのきついところで、舐めていると頭がくらくらしてくる。にゅもにゅもと柔らかい肉を口で扱き、ぬぽっと一回口から出す。うん、完勃ち。指で輪っかを作り根元を上下に扱いた。 「才能ありますよ、貴方」 そんな才能いらんって。そう思うのに、皐月くんが優しく頭を撫でてくれるので目頭が熱くなる。 「れろ、はぁ……むちゅ、んん」 べろりと舐め上げ、全体に唾液を塗していく。べろべろと夢中に舐め回していたら、髪を梳いていた皐月くんの指が強張ったので、それを合図に先端から口に飲み込んでいく。舌を巻き付けて、先端、竿、根元まで深く。長大なペニスは喉奥を使って咥え込み、ふーーって鼻で息をする僕の有り様は酷いものだろう。そこからずろぉぉと頭を引き、また深く飲み込む。ひょっとこ顔をさらしながら、それの繰り返し。 「ふっ、んぶっ、んふっ!んぼっ」 「……くっ、」 じゅぼじゅぼと頭を揺らして上り詰めていく。口から響き渡る音は酷く、今誰か入って来たら丸わかりの行為。人目を気にしておきながら大胆な自分の行動に笑いそうになった。瞬間、 「っお、ぶっーー!?」 頭に回った皐月くんの両足が僕の頭を固定した。がっちりとホールドされ硬い太ももに頬を押しつぶされる。喉奥にぐっぽりハメこまれたペニスで、一ミリの空気も吸い込む隙間もなく気道は塞がれた。しかも鼻で息をしようにも、僕の鼻は皐月くんの下腹部にぴったりとくっついてしまっている。鼻腔いっぱいに広がるのは新鮮な空気が良かったけど、皐月くんの雄臭い匂いだけだ。つまり呼吸不能。その上、ぎりぎりと締め上げられ、僕は死の淵に追い込まれた。精いっぱいの抵抗で皐月くんの太ももに爪を立てるが、その手もぶるぶると震えていた。 「……飲み込めっ!」 「ん゛ーーーーーー!!」 ぼびゅ、びゅるるるるるるっ。喉にぶち当たるドロドロの熱い粘液。胃に直接流し込まれて、昼食にとったミートスパと混じる。 「くっ、締まる…」 トドメと言わんばかり腰を浮かせて喉奥をごりゅっと抉る。ぐりんっと白目を剥くのと、触れてもいない僕のペニスが馬鹿になるのは同時だった。ぷしゃああ、と失禁してしまい下着どころかズボンを汚した。鳥肌が立ちガクガクと体の震えが止まらない。 「……っ、はぁ、中々良かったですよ……」 十分に欲望を出し切ったのか、僕の髪を後ろに引っ張ってペニスを引っこ抜く。その際、残滓を顔に掛けられた。口からどろどろと涎と精液垂れ流し放心する僕に、皐月くんは僕の名前を一度呼んで返事が返ってこないと分かると容赦なく平手打ちした。ばちんっと頬を引っ叩かれて、現世に帰ってこれた僕は激しく咳き込んだ。 「げほっげほげほっ! ごふっ、お゛ぇ……!」 急に新鮮な空気が肺に入ってきて苦しい。それと、せり上がってきた胃の中のものを耐え切れず、床にぶちまけた。荒い咳と共に逆流してきたものが吐き出し、酷い臭いが鼻をつく。それに失禁したものとか諸々、混ざり合って阿鼻叫喚。最悪、最悪、最悪ーー。げぇげぇ、と蹲って吐き出す僕の頭上に冷ややかな視線を向けられているのを感じる。 「吐くならせめて便器の中にしてくださいよ」 お前が座ってるからやろ、という言葉は嗚咽に消えた。涙が後から後から出てくる。僕、もう22やで。成人済み男性。来年の春には社会人。それなのに、失禁してゲロって泣くとか三重苦過ぎる。僕は泣きながら、それでもトイレットペーパーに手を伸ばそうとした。しかし、それは皐月くんの手によって阻まれる。 「ドロドロじゃないですか」 上も下も。そう言って、僕の顎を掬い口周りを汚しているのを見て笑う。汚いと呟いて、それから僕に口をつけた。ぎょっとしたけれど抵抗する気力もない。硬く目を瞑ってされるがまま。顔中に舌が這う感触は、近所の犬を思い出した。それより全然ねちっこいし、嫌悪感も凄いけど。 べろり、綺麗に舌で拭い去って一言。 「まず」 どこか嬉しそうに言う男に狂ってるなぁ、と改めて思った。

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