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第3話*
あれから2年半。
今年、16になった僕はまだ、追い出される事なくコロニーに住んでいる。
ドクターテディの検査は日に3度。
以前は昼の1度だったのが朝昼夕の3度に増やされたが、いつも決まって簡単な問診と、簡単な触診だけだった。
僕は相変わらず、人前で勃起してしまうのが嫌で恥じらったけど、先生はグッドボーイ、と褒めてくれた。
平穏な日々だった。
朝の検査が終わったら大広間でみんな揃って朝食を食べ、昼の検査が終わると中庭で寝そべって日向ぼっこをした。
夜の検査が終わると、先生は「おやすみ」と言って額にキスをしてくれた。
本当に平穏な日々だった。
トニー、リッキー、フレッドがいなくなったこと以外は───。
そしてある日、ついに僕にもその時がやってきたんだ。
それは、いつも通り中庭で日向ぼっこをしている時だった。
お日様が気持ちいいな、と思ってうたた寝をしてしまいそうな気分だったんだ。
だけど、それは突然、本当に突然やってきた。
下半身がぞわっとして、イヤな予感が過ぎった、そのすぐ後だった。
ドッと心臓が大きく跳ね上がって、目の前が一瞬赤く染まって、全身から汗が吹き出した。
熱くて重くてぬめったものが、僕の中を蠢いているみたいな不快感で、もういても立ってもいられなくなった。
そうだドクターテディのところに行かなくちゃ。
先生の事を考えた瞬間にグラグラと世界が揺らめき始めて、先生の事しか考えられなくなった。
「クっ、タ、テデ、ィ、っすけ、ドクッ、たァ、──」
『ヒート感知、B-4中庭。ヒート感知、B-4中庭。ドクターは直ちに防護服に着替えてください。繰り返します、ヒート感知、B-4中庭──』
聞いた事のない電子音がぐにゃぐにゃ歪んで聞こえた後で、霞む視界の先に白い服を纏ったドクター達が見えた。
だけど動けない。指1つ動かせない。だめ、遂に追い出される、僕は追い出され、──。
ドクターテディ、ドクターテディに会いたい、ドクターテディに会って、僕は、僕は、僕はぼくボク、ドクターテディ──。
「治験体Ω7796、ヒート確認。担当医、ドクターα0137はまだですか」
「現在、此方に向かっています」
「地下治療室確保。F2号室、フリーです」
「了解。先に運びま、」
「遅れて申し訳ない、α0137到着しました。Ω7796搬出願います」
「どく、た──、てで、ぃ──、」
「意識回復、ドクター指示を」
「開脚固定継続、バキューム用意。試験薬A投与準備。──グッドボーイ、ルディ。おかえり、いい子だ」
目を覚ました時、ぼくはイスみたいな診察台の上に真っ裸で足を大きく開かれて固定されていて、身動き一つ取れないようにしっかりと拘束されていた。
聞きなれない言葉の中に、先生を見つけて視線を動かすと、普段より広いのに機械と器具だらけの部屋で、白の防護服に身を包んだ先生が、僕を見詰めているような気がした。
「っ、ぁ、て、でぃ、──あちゅ、なか、あっ、て、で、ぃっ……っすけ、お、なか、あちゅぅ……っ、どく、た、」
じんじんと全身が疼いて疼いてしょうがなくて、大切なところが、熱くて熱くて、お腹の奥もじんじんと何かが湧き出すみたいで。
朦朧としながら先生を見詰めるのに、いつもみたいに表情がわからなくて不安で、でも先生が欲しい先生が、先生が欲しい。
「バキュームセット」
「ひぁっ、あ、ぅ、あぁあ、ぁ、っ」
ぐちゅり、と音を立てて先端に管がついた筒状のものが、すっかり勃起した僕の部分を、ゆっくりと飲み込んでいく。
ぶるぶると太腿が震えて、視界が一気に白で埋め尽くされた。
「吸引」
先生が言った瞬間、ぐちゅぐちゅ音を立てて筒が上下に動きながら、キュイィィンと高い音が鳴り響いた。
「っああぁあっ、あぁぁぁぁあっ……──、!」
「止め」
吐精感と排尿感が入り混じった激烈な快楽が全身を貫く。
下腹部からごっそりと抜き絞られる感覚と一緒に、バチバチと視界が弾けて最後には真っ白に破裂して、すぐに暗闇に変わる。
「っ、……──」
「1.6ml採取」
「グッドボーイ、ルディ。だけどちょっと少ない。そのまま微弱で刺激を続けて」
真っ暗な闇の中で、体に力が全然入らない。
ドクターテディ、どこにいるの、いつもみたいに抱き締めてよ、ぼくなんか変なんだ、おかしいんだ、ドクターテディ。
「──…、あぁっ、ぅ、っあ、っ、ひ、っぃ、あっ、や、らぁ、や、ァ……っ、らめ、ら…あっ、」
筒の中がぐりゅぐりゅと僕のを揉み込むみたいな柔らかな刺激を与え始めると、意識がまた上下に揺す振られ始める。
浮かんでは、沈んで、浮かぶのに、底まで沈められて。
息継ぎをしたら、またすぐに快楽の波の中に沈められて。
「…やっ、やっぁ、…っやら、くりゅ、──、まった、くる、のっあ…やら、なんっか、くる、や、っぁぁ、」
「今度はゆっくり吸引掛けて──、吸引」
「ひぁぁ、あああっ、やっ──、やら、ああぁっぁ……めぇええええ、やめ゙えええ、ぇぇっ、い゙ぃいいィィィあぁぁっッッ────!」
射精感がずっとずっとずっと止まらない、終わらない、止まってくれない。
内股がびくびく痙攣し続けて、搾取されるがままに、だらだら出る。だらだら出る感覚だけが続く。
気持ちいい、でももう出ないもう出ない、もうだめ、気持ちいい、でない、ドクターやめて、もうなにもない、でない、気持ちいい、だめ、だめ、────。
「止め」
「────……ヒぃ、っ、ぃ」
「2.2ml採取」
「上出来だ、グッドボーイ、ルディ。試験薬A投与、1分後にフェロモン値確認」
「了解」
遠くで、先生が何か言ってるけど、何を言ってるかわからない。
体をまるごと全部、深い深い闇に落とされていくみたい。
左腕が少しだけ鋭く痛んだけど、それも刺激になって、気持ちいいに繋がって、体ががくがくする。
でも動けない、動かせない。こわい、どうしよう、たすけてドクターテディ。
「──……フェロモン値、変動ありません」
「ン。吸入麻酔掛けてあげて。初回でこれ以上の負担は危険だ、以後経過観察に切り替える」
「了解」
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