2 / 10

(02) 再会

ここは、繁華街のとある飲み屋。 ミノリは、ビールジョッキを掲げて声を上げた。 「アラタさんのご帰還に乾杯!」 カチン! あまりに上機嫌のミノリに、アラタは呆れ顔で言った。 「おいおい、これ何回目の乾杯だ?」 「あはは、いいじゃないですか? 何回だって。オレ嬉しいんすよ。久しぶりアラタさんに会えて!」 アラタは天井を見上げた。 「そうだな、高校卒業以来か……かれこれ6年ってとこか」 「そうっすよ! ちっとも帰って来てくれないんですもの!」 ミノリは頬を膨らませる。 そんなミノリを見てアラタは笑った。 「あはは。まぁ、大学も地方だったしな。就職も東京に出ちまったし」 「オレ、本気で寂しかったンスから。でも、良かったです。これからはずっとアラタさんと一緒っすね!」 嬉しそうなミノリに、アラタは少し顔を曇らせた。 「実はな、帰って来たと言っても、半年ってところだけどな」 「えー、そんなに短いんすか?」 「まぁな、その後はまた本社勤務」 「へぇ、出世街道まっしぐらっすね。オレ、アラタさんが悪い事し過ぎて左遷されたとばかり……」 ミノリがそう言い切る前に、アラタの拳がミノリの頭に落ちた。 「コラ!」 「いてて、マジ殴りやめてくださいって!」 「悪りぃ、悪りぃ。ふふふ、まぁ、せいぜいこっちではのんびりさせて貰うつもりさ」 アラタがミノリの頭をポンポンと撫でると、ミノリは嬉しそうに片目つぶった。 「はい! せっかくですから生気を養っていって下さい!」 「はあぁん、あっ、アラタさん凄いっすっ、奥まで挿っています!」 「ミノリ、相変わらずの凄い締め付け、気持ちいいぜっ!」 アラタとミノリはそのままラブホテルに直行。 そして、欲望のままに体を重ねる。 「はぁ、はぁ、オレ、アラタさんの勃起チンポが忘れられなくて……」 ミノリは四つん這いにさせられ、アラタは後ろからガンガン攻めていく。 ミノリは迫りくる快感を幾度となく味わい、その度に悦楽の声を上げた。 「うっ、締まる……お前、感度が随分と上がってるじゃないか? 相当やってるな?」 「ははは、分かります? オレ、一時期、タケシさんに飼われていた時があって、散々、アナル開発されたんすよ」 ミノリの言葉に、アラタは顔を歪めた。 「なっ、タケシ? あの変態か? くそ、タケシと穴兄弟って事かよ」 「そうっすよ、ふふふ。驚かないで下さい、今はタキさんと同棲してます!」 「なっ……タキって、元生徒会長だろ?」 ミノリは、アラタの悔しがる顔を見るのが嬉しくてたまらない様子。 アラタは、そんなニヤニヤ顔のミノリに呆れて言った。 「マジか……お前、淫乱過ぎるだろ?」 「ふふふ、でも、アラタさんだって高校の時は無双だったじゃないですか?」 アラタは、カーッっと顔を赤くした。 今更ながら恥ずかしい。 「バカ、それを言うなって。昔の事だ」 「でも、受け仲間の憧れだったんすよ。アラタさんに抱かれるの……」 ミノリは、うっとりとした表情を浮かべた。 同時に、今、アラタに抱かれている喜びをあらわそうとアナルをキューっと締めた。 アラタは悲鳴を上げる。 「うっ、締め付けるなって……いきそうだ」 「もうっすか? ふふふ。アラタさん、衰えたんじゃないですか?」 ミノリの挑発にアラタはカチンときた。 「何を言うか! 足腰立たないようにしてやる! ミノリ、いくぞ!」 「あっ、あっ、凄い! アラタさん、あっ、あっ、ダメ、はぁああん……」 アラタの腕枕。 ミノリはご機嫌で、アラタの逞しい体に指を這わす。 アラタは、それには構わず、天井を見上げながら言った。 「なぁ、ミノリ。タキと同棲って、スズハラとは別れたのか? なんだかんだで、お似合いだと思っていたのだが」 「ええ、別れました。もう3ヶ月程前になります。スズハラはダメです。あいつ、もともとショタ好きだったでしょ? オトコの娘カフェに入り浸りで、オレが愛想を尽かしたんです」 「そっか……」 その言葉には、アラタの同情の念が込められていた。 ミノリは、そんなアラタの優しさを感じながら呟いた。 「人には色んな性癖がありますからね。まぁ、しょうがないかなって」 「そうか、まぁ、気を落とすな。ミノリ……」 ミノリは顔だけ見れば、多少の女顔で可愛い部類には入る。 しかし、体格は背もそこそこあるし肉づきも男そのもの。 アラタにとっては大好物な体なのだが、ショタ好きやオトコの娘好きにとっては好みは分かれるところ。 アラタはどうミノリを元気づけようかと思案していると、ミノリは意外にも元気よく答えた。 「はい! でも、アラタさんって真っ当なホモっすよね?」 「真っ当なホモって……お前」 「あははは。いやいや、ショタとか興味ないでしょ?」 「そうだな。全くないな。やっぱり引き締まった男の体を抱きたいな。マッチョ過ぎるってのもアレだが」 「ふふふ。そう言うと思ってました!」 元気に笑うミノリ。 なんだ、元気じゃないか、とアラタもホッとして笑った。 ふと、ショタという単語で頭に浮かんだ事が有った。 アラタは、話し出した。 「ああ、そう言えば、ショタといえば……今日、河原で、家出少年みたいな子がいてな……」 「セーラーに短パンの制服ですか……」 「ああ」 ミノリは、あごに手を当てて考え込んだ。 「近隣の私立の学校はみんなブレザーですね。そんな制服、聞いた事無いっすね」 「そっか……じゃあ、どこか遠い所から家出してきた子だったのかもな」 実の所、アラタはあの子の『泊めてほしい』というお願いを無下に断ってしまった手前、その後が気になって仕方がなかったのだ。 お腹がすけば勝手に家に帰るだろうと高を括っていた。 しかし、近隣じゃないとすると無事に家に帰れるのか心配ではある。 そんなアラタの不安そうな顔を見たミノリは、ある提案をした。 「スズハラだったら、小中の制服に詳しいので何か知っているかもしれません。聞いてみますか?」 「いや、いいよ。別れた男に借りを作りたくないだろう?」 アラタの言葉にミノリの瞳はキラキラと輝かせた。 「ヒュー! さすがアラタさん、優しいっすね。そういう所に惚れちゃうんすよ! オレ!」 「バ、バカ! 持ち上げるなって!」 照れ隠しで怒鳴るアラタ。 しかし、やはりあの男の子の事が気になっていた。 「……そっか、分からないかぁ」 ラブホテルを出たアラタとミノリは、人目を避けて抱き合うと軽くチュッとキスをした。 ミノリは、笑いながら言った。 「でも、オレは今でもアラタさんの事は特別に思ってますよ!」 「そっかよ、それは、ありがとな!」 「いえいえ、どういたしまして。また、抱いてください、アラタさん。オレ、愛していますから!」 「お前、さらっと言いやがって。タキの奴が聞いたら泣くぞ?」 「あははは。それは内緒で!」 「ったく! じゃあ、またな!」 アラタは、走り去るミノリに手を振って見送った。

ともだちにシェアしよう!