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言えない言葉。
違うのに。
こんなことが言いたいんじゃない。
違う。
もしかしたらこの手紙の送り主の誰かと付き合うのかな。
どうして俺じゃないの?
俺じゃいけないの?
俺にしてよ。
でも、そんなこと言えるわけがない。
嫌われたくない。
同性が好きなんて気持ち悪いよね。
自分でもわかってる。
これが普通じゃないっていうことくらい。
でも。
だから――。
好きだから……。
律さんとひとつ屋根の下で暮らすようになって、知らなかった一面を知ってますます好きになっていく……。
成績だけじゃなくて性格も半端なく優しいなんて反則だ。
律さんを想いすぎて頭も胸もズキズキする。
「――ッツ」
苦しい。
息、できない。
「そうだね、いつもごめんね」
やめて。
謝らないで。
律さんが悪いんじゃない。
兄弟っていうこのポジションに甘えて、告白する勇気のない俺が悪いだけ。
すごく苦しい。
涙、出そうだ。
「そう思うのならさ、この人たちに言っておいてよね」
違う。
言いたいのはそうじゃないのに……。
だめ、もう涙が限界。
最後の言葉を吐き捨てて2階の俺の部屋に逃げ込んだ。
……パタン。
部屋につくなり、堰を切った涙がボロボロ溢れ出す。
力尽きた俺は部屋の電気も点けないまま、ベッドに倒れ込むようにして沈み込んだ。
俺の部屋の隣は律さんの部屋だ。
だから律さんに聞こえないよう、枕に顔を押しつけて、声を殺して泣く。
最近、もっぱらこんなだから枕のカバーとかベッドのシーツが涙の染みでいっぱいだ。
これからも、たくさん涙の染みが増えていくのかな……。
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