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距離、近いですっ!
「――ッツ!」
ないないないない。
そんなこと、有り得ないッ!
俺はふと想像してしまった光景を掻き消すために大きく頭を振った。
それとほぼ同時。
「ただいま」
パタン。
律さんの声とほぼ同時に玄関のドアが開いて閉じる音がした。
バクバク、バクバク。跳ね続ける俺の心臓。
どうしよう。
今さらながらに緊張してきた。
だって今日は母さん夜勤の日で、しかも翔さんも残業でホテルに泊まり込みするって言っていた。
おかげで今夜はふたりきり。
ついさっきまではオムライスのことばかり考えていたから何も思わなかったけど、よく考えたら俺、好きな人とふたりきりってすごくピンチじゃない?
こういう時、どうしたらいいのかわからなくなる。
「今日はオムライスなの?」
帰宅したばかりで学校の制服姿のままの律さんがキッチンで立ち尽くしている俺のすぐ側までやって来た。
はぅううっ!
律さんは今、前屈みになって、俺の背後にいる。
まるで俺に被さってくるみたいに……。
ずっと近いんですけどっ!!
背後にいる律さんが気になってちょっぴり振り返れば――。
……うわ。
やっぱ睫毛長っ!
染めてない天然の茶色い髪は極め細かくて……。
骨張った大きな手が俺の両肩に触れてる。
律さんの甘い吐息が俺の頬に当たる。
顔、近いからっ!
どうしよう!
俺ってすごいエロい。
どうやっても律さんの薄い唇に視線が向いてしまう。
律さんとのキスって、どんな感じなのかな。
初キスはレモン味って本当なのかな。
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