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貴方を知れば知るほどに……。
――それは1ヶ月前。
ダイニングキッチンにあるソファーでうたた寝をしていた時、今みたいに暴走族のバイク音が聞こえて、体を丸めていると、たまたま居合わせた律さんが俺の様子がおかしいことに気づいてくれてさ。たくさんのバイクのモーター音が嫌いなことを話したんだ。
それ以来、律さんはこうして俺を宥めに来てくれる。
「ああ。ほらやっぱり」
グイッ。
「!」
腕を引っ張られて体が浮いたと思ったら、すっぽりと力強い腕に包まれる。
ふんわり。
俺の鼻孔に甘い香りが入ってくる……。
――ああ、どうしよう。
俺、律さんに抱きしめられてる。
ずっと近くに|大好きな人《律さん》がいる。
「大丈夫、大丈夫」
トントン。
まるで小さい子供を宥めるような手つきで背中を叩いてくれる……。
「――ッツ」
お願い。
これ以上、優しくしないで。
好きっていう気持ちが溢れてくる。
「怖くないよ」
トントン、トントン。
宥めてくれる律さん。
目からはポロポロ涙が溢れる。
だけどあのね、この涙はバイクの騒音が怖いからじゃないんだよ?
律さんといると不思議。
あんなに怖いって思っていたバイクの音も怖くなくなる。
今はもう怖くない。
律さんがこうして抱きしめてくれているから……。
でもこのまま。
今だけは――。
こうしていてほしい。
律さん。
俺、貴方が好き。
俺はギュって律さんにしがみつくんだ……。
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