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痛む胸。
「俺が気に入らないならそれで構わない。卒業後は大学に進学してひとり暮らしをするつもり。だけど、どうか父さんとは仲良くしてやってほしい」
律さんの言葉が俺の胸に突き刺さった。
律さんは何て言ったの?
ひとり暮らし?
律さんが――?
それってもう、会えないってこと?
もう終わり?
律さんの顔、もう見られないの?
律さんがいない日常が来るなんて思いもしなかった俺は、体が硬直した。
そりゃ、ね。
俺だって、ひとり暮らしをしようと思っていたよ。
だけどさ、俺が実家に戻ればずっと律さんはいるものだと決めつけていた。
律さんが俺から離れていく……。
そう思った時だった。
ズキンッ!
「――ッツ!」
急に頭が痛み出す。
痛い、痛い、痛い。
ズキン、ズキン、ズキン。
どうしよう。
頭だけじゃなくてお腹も痛くなってきた。
痛いよ……。
頭も、お腹も――。
「――っつ、ぅう……」
あまりにも痛すぎて蹲ってしまう。
「楓?」
俺の異変に気がついた律さんがしゃがみ込んだ。
「どうしたの? どこか痛いの?」
律さんの心配そうな声が聞こえる。
だけど今の俺はもういっぱいいっぱいで、何も考えられない。
「……お腹」
「お腹が痛いの?」
「頭、も……」
ううん、それだけじゃない。
律さんを想う胸も――。
何もかも全部が痛いよ。
「……痛い、痛い痛い痛い痛い!」
地面にしゃがみ込んで子供のように駄々をこねる俺はもう最悪。
どこの小学生のガキだよって自分でも思う。
こんなの、律さんは煩わしがるに決まってる。
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