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届かない想い。
俺、どうしよう。
置いて行かれるの?
そう思った。
だけど……。
そしたら、さ。
やっぱり律さんは優しい。
「楓、大丈夫? ほら掴まって」
痛みを訴える俺を背負って家に連れて帰ってくれるんだ。
……あたたかい背中。
夜なのに、まるでお日さまに当たってるみたいにほかほかする。
「――っひ、ひ……」
こんなに好きなのに届かない想い。
胸が苦しい。
息が、
できない。
「熱、はないし。お腹も張ってないわね」
律さんは、嗚咽を漏らして泣く俺を背負って家に着いた。それからベッドに寝かせてくれて……。
母さんが俺を診察するけれど特に異常はないらしい。
「ちょっと疲れちゃった? 明日は学校休みなさい」
母さんはにっこり微笑んで、俺に布団をそっと掛けてから、部屋を出て行った。
ドアの外では母さんと律さんの話し声が聞こえる。
でもコソコソ言っているから何を話しているのかわからない。
すっかり泣き疲れてしまった俺は、ズキズキする頭とお腹をそのままに目を閉じた。
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