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嫌いになんてなれない!
見るからに妖しい人。
普段の俺なら警戒するハズなのに、その時はどうしてもひとり暮らしをするお金がほしくて仕方がなかった。
「いくらくれる?」
「君、高校生だろう? 土日の休日限定で1日6時間拘束。時給1万でどう?」
1時間で1万円。
っていうことは――。
「えっ? 1日6万もくれるの?」
1ヶ月で50万近く貯まる計算になる。
それだとすぐお金貯まりそう。
引っ越しもすぐできるし!
「俺――」
やります!!
そう言いかけた時だった。
「楓!」
今ではすっかり聞き慣れた声に振り返れば、そこには背の高い、男の人が――律さんがいたんだ。
「あの、俺。やりま……す」
律さんに構わず男の人がいる方を向けば、そこにはもう誰もいなかった。
「楓、やるって何? さっきの人は誰?」
――怖い顔。
雰囲気も刺々しい。
なんだかいつもの律さんじゃないみたい。
怒ってる?
俺が恐る恐る律さんを見ていると、律さんは大きなため息をついた。
「……最近、楓くんが俺を避けてるのは知っている。気に入らないことをしたのなら謝るよ」
――違う。
律さんを嫌いになったんじゃない。
避けているのは違う理由だ。
貴方が好きだから……。
だけどそんなことは言えやしない。
言ったら最後、気持ち悪いと思われてしまうかもしれないから。
「ッツ――」
黙っていると、律さんは続けて口を開いた。
律さんはどうやら俺が図星だと思ったらしい。
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