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《another story》俺のどこが好き?

「あの、律さん。聞きたいことがあるんだけれど――」  それは夜。俺の部屋。ベッドの上でいつものようにバイクの騒音が怖くて律さんにしがみついている時のこと。  ようやく震えが止まった俺は、かねてからずっと気になっていることを律さんに訊くためにそっと口を開いた。 「うん?」 「俺のどこが好きなの?」  そりゃね? 律さんはいつも可愛いって言ってくれてる。  だけどさ。  それ、本当に俺のことなのかな?  とか思っちゃうわけで――……。  だって俺って、たしかにチビだけど目付き悪いし、照れているのを隠そうとして口も悪くなる。  全然可愛くないんだもん。  だから律さんに訊ねたんだけど……。  「今この状況でそれを聞くの?」  なんか律さん、困ってる?  苦笑してそう言った。  ううん、それだけじゃない。  俺を抱きしめる腕がほんの少し強くなったんだ。 「? えっと、どういう……?」  顔を上げて、律さんの表情を確認しようとしたら、ギュって抱きしめられた。  おかげで俺、律さんの顔見られない。  それどころじゃなくて、律さんとの距離がずっとずっと近くなって。  これ以上ないってうくらい抱きしめられてしまう。  ドクン、ドクン。  律さんに聞こえちゃうんじゃないかっていうくらい、俺の心臓が大きく鼓動している。 「あ、あのっ。律さん?」  あまりにもドキドキしすぎてどうしようかって思っていると――。 「騒音が泣くほど苦手なのに、必死にひとりで堪えるところ」 「っ、っひゃ!」  ハム。  俺の右耳、律さんに咥えられちゃった。 「顔を真っ赤にしてムキになるところも可愛い」 「――ッツ」  甘い声が耳孔に入ってくる。  くすぐったくて首を竦めると、 「目を潤ませて俺を見つめてくるところとか」  ……チュ、チュ。  顎を持ち上げられて、両瞼にキスが落とされる。  あばばばばばっ! 「り、りつさっ!?」 「髪の毛、外に跳ねてるのも可愛いよね」  チュ、チュッ。  旋毛にもキスされる。 「あとは、そうだな……」  グルン。  律さんによって、俺の体が反転する。  真上に律さんの顔があるわけで……。  律さん、なんかいつもと違う?  真剣な眼差しで俺を見下ろしてくる。  なに?  体が熱い。  いつも以上にドキドキするのはどうして?  心臓がバクバクする。  どうしたらいいのかわからなくなって硬直していると――。  両足の間。  律さんの片足があるのに気が付いた。  だからってどうこうっていう話じゃないのに、さ。  なに?  どうしてこんなにドキドキするの?  ゆっくり、ゆっくり。  律さんの顔が近づいてくる。  律さんのこと、すごく好き。  怖くない。  怖くないのに……どうして?  なんで俺。  こんなに震えているの? 「っひゃ!」 「こうやってキスするたびにプルプル震えて、チワワみたいなところとか?」  唇が触れ合うかどうかの距離。 「俺の名前を呼ぶたびに震えている唇も可愛い」  そっと囁かれて……。 「んむっ!」  俺の口が律さんの唇に塞がれる。  キスされた。 「っふ、律さっ!」 「こうやって、何度キスしても馴れない初心なところとか――」  離れたと思ったら、  また。  キスされて……。 「っふ、んぅう……」  律さん……。 「っふぁぁぁ……」  も、ダメ。  ……くてん。  その日、俺の心臓がオーバーヒートしました。  **END**

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