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 射精後の余韻でシーツに沈む。ぐったりして息を整えているとアキラが一瞬だけ席を外した。ガチャンと機械的な音が響いたかと思うと、何かを手にして戻ってくる。 「ははっ、すげー格好」 「!?」  カシャ、カシャ、とシャッター音が響きぎょっとして相手の手元を見た。  ゴールドのスマホと目が合って一気に血の気が引いていく。 「ちょ、馬鹿っ! やめっ何やってんだよっ」 「何って……見ればわかんだろ? 人を騙す悪ガキの恥態を撮ってんだよ」 「や、やだやだっ! 撮るなよっ馬鹿っ、変態っ!」  ベッドから転がり落ちそうな勢いで起き上がり撮影を止めさせようとするけれど、そもそも身長差があるから取り返せるわけがない。  だけど、もしあの写真がSNSで拡散とかされたら俺はもう、生きてはいけない。 「……お前、まだ自分の立場ってモンがわかってないみたいだな。オレからすれば、精液べったり付けたスカート履いて男に弄られて喜んでるお前の方がよっぽど変態に見えるけどな」  揶揄するように言われカァ、と頬が熱くなった。  俺だって別に好きでこんな格好しているわけじゃない。 気持ち悪くて吐き気すら覚える。 「それに、まさかこれで終わりだと思ってるんじゃないだろうな?」 「へ?」 耳を疑いたくなるような質問を投げかけられて思わず間の抜けた声が洩れた。 いやいやいや、こんな格好でイかされて更に写真まで撮ったくせにまだ何かやるつもりなのか!? 「お前だけ気持ちよくなってたらお仕置きにならないだろうが」 「……べっ、別に気持ちよくなんか……」  俺にしてみたら、男の手でイカされたりするだけでも充分屈辱的だ。人前であんな醜態を晒して平気でいられるほど俺は人間出来ていない。  たじろぐ俺を嘲笑うかのようにスマホをそばに置いてあったソファの方へと投げたと思ったら、流れるような動きで肩を掴まれて身体が反転する。起き上がれないように上半身をベッドに押し付けられて、腰を高く持ち上げられ手首を後ろ手にタオルのようなもので縛られた。 「わ、ちょ……っなにするつもりだよっ!?」 「何って、第二ラウンド、かな」 「ふ、ふざけんなっ!馬鹿っ触るなっ」 「ほんっと、色気ねぇなお前……。さっきはあんなに可愛かったのに」 「可愛いわけないだろっ! とにかく、離せよ馬鹿ぁっ!」  じたばたともがくけれど、肩を押さえ付けられていて身動きがとりづらい。   戸惑う俺の言葉を無視して頭上で小さな舌打ちが聞こえてきたかと思うと、、突然冷たいぬるぬるとした液体が尻に掛けられた。  それがゆっくりと太腿を伝ってぽたぽたと床に染み込んでいく。 「ちょ、何を……!?」 「潤滑剤だ。痛いのはいやだろう?」 「当然だっ! って……まさか……っ」  いうが早いか長い指がもっとも触れて欲しくない部分に当たる。  自分でも触れたことのない部分に指を立てられサーッと全身の血の気が引いた。 「うわっ、ちょっ! そんなトコ触んな……くっ」  慌てて腰を引こうとしたけれど、ベッドが邪魔してそれを許さない。潤滑剤のぬめりも手伝って、俺の体は異物内部への侵入を簡単に許してしまう。 「ぅ、ぁ……気持ち悪い……」  内臓を抉られるような感触がなんとも気持ち悪くて仕方がない。 「大丈夫だ。すぐにそんなこと言ってられなくなるから」 「五月蠅いっ! 離せよバカッ! 変態っ!」  悔しくて思いつく限りの罵詈雑言を浴びせてみても、全く動じる気配はなく、俺を嘲笑うかのように身体を捩れば捩るほど指が奥まで侵入してくる。 「離せと言うわりには腰が揺れてるな」 「そんなわけ……ァアッ!」  そんなわけあるか! と言いかけて言葉にならない声が洩れた。  何かわからないけれど内部を蠢く指が、ある一点を掠めた途端ゾクゾクするほどの甘い痺れにも似た感覚に襲われたからだ。 「ここか――」  クチュリと指が動く。 「ぁあっ!」  執拗に同じ部分ばかりを刺激され、膝ががくがくと笑う。腰が痺れてそこを刺激されるたびに全身に電流が走ったみたいに、目の前がチカチカする。  強烈な強い快感を引き出されて罵声を浴びせるどころの話ではない。 「や……っソコ、なんだよ、ぁっあっ」  自分の意思とは関係なく、口を開けば洩れるのは嬌声ばかり。どうしよう、嫌なはずなのに……。なんで、俺……?  下半身に急速に熱が集まりだしたのを感じて、俺は激しく動揺した。認めたくない自分の体の変化に戸惑いを覚えるけれどどうしたらいいのかわからない。 「やっ、んんっ……待って、これ、やだ……っ」 「嫌だ、じゃなくて気持ちいい。の間違いだろ?」  するりともう片方の手で性器を握りこまれ息が止まりそうになった。  中と外同時に攻め立てられればもう、わけがわからなくなってしまう。  もはや膝が笑って姿勢を保てないし、こんなにあちこち色々されたら直ぐにでも――。 「あっ、ぁあ! それ、やら……やめっ……も、駄目イきそ……っ」 「……止めてもいいのか? 本当に?」 ピタリと、それまで激しく攻め立てていた指の動きが止まった。  ――え?   なんで?   驚いて思わずアキラの顔を見た。目が合うと、涼しげな顔をしてにやりと笑う。 「イくのが嫌なんだろう?」 「……ㇰッ」  文句の一つでも言ってやりたいけど、今はとにかくこの中途半端に燻ぶった熱を開放してほしい。 「ふはっ、さっきまでの威勢はどこ行ったんだろうな?」 「うるさいっ、いいから……早くッ」 「ん? なに? 嫌だったんじゃなくて?」 「~~~~ッ」  コイツ、性格悪っ! わかってて絶対に楽しんでる。 「い、嫌じゃ……ない。から、早く……ッ」 「イかせて下さい。だろ?」  すぅっと目が細められ、耳元でセクシーボイスがそう囁く。  その声だけで腰が疼いて腹の奥がきゅってなる。 「ぁあっ!」  俺の言葉を急かすように、ぐりっと指が動いてさっき散々弄られた個所を掠める。強烈な快感を身体に思い出させてから今度はポイントを外して体の中を撫でられゾワゾワと全身が総毛だった。 「ん、く……ッ」  じれったい動きに腰が揺れる。悔しい、けど……。  ぐるぐると熱を孕んで爆発しそうな欲望をとにかく今は一刻も早く開放したい。 「ほら、言えよ」 「……ッ、い、イかせ……くださ、い」  促すようにゆるゆると性器を扱かれて、目頭に涙が滲んだ。よくできましたと言わんばかりに首筋に軽く口づけられて同時に扱く指が早くなる。 「ん、は……ぁ、ぁあっ!!!」    中にある指が敏感な部分を撫でた瞬間、意識が飛びそうなほど視界が真っ白になって俺は2回目の白濁を飛ばしてしまった。

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