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第1話/事の発端②

 彼の唇から漏れるその悲鳴を聞いた瞬間、直人はすべてを理解した。  一糸も纏わない彼。  共にしているベッド。  この光景から推測されることはただひとつ。  自分は彼を抱いたのだ。  ああ、自分はなんということをしてしまったのだろう。  たしかに、昨日はデザイン画のパターンを作成するにあたっての型紙の最終調整ともあってか、かなり疲労がピークに達していた。  昨日は――たしか深夜遅くまでチーフデザイナーの彼、飯島 郁己と型紙について話し合っていた最中だった。  そうだ。たしかこの部屋で、ふたりで仕事をしていた。  それで何をどうしたのか――。  だめだそこから先が思い出せない。    しかし、目の前の彼はとても脅えている。彼を抱いたに違いないことはたしかだ。 「飯島、その……悪かった。実は何も覚えていなくて、その……すまない。こうなった責任は俺にある」  重苦しい雰囲気の中、直人は渇いた喉の奥を動かし、静かに告げた。

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