2 / 15
第1話/事の発端②
彼の唇から漏れるその悲鳴を聞いた瞬間、直人はすべてを理解した。
一糸も纏わない彼。
共にしているベッド。
この光景から推測されることはただひとつ。
自分は彼を抱いたのだ。
ああ、自分はなんということをしてしまったのだろう。
たしかに、昨日はデザイン画のパターンを作成するにあたっての型紙の最終調整ともあってか、かなり疲労がピークに達していた。
昨日は――たしか深夜遅くまでチーフデザイナーの彼、飯島 郁己と型紙について話し合っていた最中だった。
そうだ。たしかこの部屋で、ふたりで仕事をしていた。
それで何をどうしたのか――。
だめだそこから先が思い出せない。
しかし、目の前の彼はとても脅えている。彼を抱いたに違いないことはたしかだ。
「飯島、その……悪かった。実は何も覚えていなくて、その……すまない。こうなった責任は俺にある」
重苦しい雰囲気の中、直人は渇いた喉の奥を動かし、静かに告げた。
ともだちにシェアしよう!