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第2話/企み②

 チーフパタンナーはチーフデザイナー同様にブランド会社の顔だ。重要なポジションにある。  パタンナーの主な仕事は、郁己が描き起こしたデザイン画を元に型紙を作成し、現実には困難なところを指摘していく役目を担っている。  それには分析能力や頭脳はもちろん、柔軟なアイデア力や行動力も必要になってくる。その適合者が、彼、吉澤 直人なのだ。  そんな優れた人に、郁己は恋をしてしまった。  お互い重要な立場ということもあり、長時間にわたって同じ部屋に入り浸ることもしばしあった。  だから当初は一目惚れでも、それが恋へと変化するのはそう時間はかからなかった。  実のところ、家族にもまだ打ち明けてはいないが郁己はゲイだ。そういう性癖だったこともあり、この恋にすぐのめり込んでしまった。  しかし、直人は違う。  彼は近々、社長自らに勧められた見合いに応じることになっていた。

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