10 / 15
第3話/指輪。⑤
――ああ、自分はなんということをしでかしたのだろう。
好きな人を手に入れようと画策した結果がこれだ。
あのまま、余計なことを企まずに仕事仲間として側にいればよかった。
そうしたら、郁己はまだ直人のパートナーとして側にいられたかもしれないのに……。
――いや、そうはなるまい。だって郁己はもう限界だった。郁己の中で、直人への想いが大きく膨らみすぎていた。
仕事上のパートナーとして一緒にいるのは限界だった。
「ごめんなさい! 俺、アンタが見合いをするって聞いて、いても立ってもいられなくて……だから抱かれたって嘘をついて引き留めたんだ」
――だからもう、気にしなくてもいい。
郁己は嗚咽を漏らしながら最後にそう言うと、ホテルの一室を抜けた。
ともだちにシェアしよう!