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第3話/指輪。⑤

 ――ああ、自分はなんということをしでかしたのだろう。  好きな人を手に入れようと画策した結果がこれだ。  あのまま、余計なことを企まずに仕事仲間として側にいればよかった。  そうしたら、郁己はまだ直人のパートナーとして側にいられたかもしれないのに……。  ――いや、そうはなるまい。だって郁己はもう限界だった。郁己の中で、直人への想いが大きく膨らみすぎていた。  仕事上のパートナーとして一緒にいるのは限界だった。 「ごめんなさい! 俺、アンタが見合いをするって聞いて、いても立ってもいられなくて……だから抱かれたって嘘をついて引き留めたんだ」  ――だからもう、気にしなくてもいい。  郁己は嗚咽を漏らしながら最後にそう言うと、ホテルの一室を抜けた。

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