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第4話/求婚。②
「君が同じベッドで眠っていたのを見たあの時、俺がどう感じたか判るかい?」
やがて見えてくる景色に、郁己はしゃくりを上げた。
(どうして、どうして彼がいるの?)
目の前にいる人物を見るなり、郁己は自分の目を疑った。
だって自分は抱かれたと嘘をつき、裏切ったのだ。
なぜ、直人がここにいるのだろう。
続けて話す彼の言葉に耳を傾けることさえできない。
今は、目の前にどんなに願っても叶わない恋の相手がいることしか判らなかった。
「仕事ではなく、オフの日に会うことも多くなったおかげで、四六時中君の姿が頭から離れなくなった。君を抱いたことが嘘だったのはショックだったけれど、これから真実にするのも悪くない。そうは思わないか?」
「なに、を……」
「君のために見繕った指輪なんだ。どうか受け取ってほしい」
「でも、アンタには好きな人が……」
「好きな人? 君の他に?」
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