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第4話/求婚。③

 すんっと鼻を鳴らして言う郁己に、直人は首を傾げた。  白々しい。  笑い合う二人の姿が郁己の頭から離れない。  郁己は痛む胸に手を当て、首を振った。 「先週、女の人と一緒にいるのを見た!」  深夜の公園はとても静かだ。郁己の甲高い声が辺りに響いた。 「ああ、あの人は姉だよ。俺の様子が妙に浮かれていたらしい。彼女がいると勘繰られてしまってね、だったらと君に捧げる指輪を一緒に選んでもらう羽目になったんだ」  悲しみを抱く郁己を宥めるようにそう言った直人の口調はとても優しいものだった。 「俺が浮かれていた原因は何だと思う?」 「えっと……社長が勧めたお見合い相手の女性が綺麗だったから?」  尋ねられ、郁己は眉間に深い皺を刻みながらそう口にした。  すると直人はがっくりと項垂れてしまった。

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