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第4話/求婚。④

「君っていう人は……どうしてここまで言わせておいて理解していないかな」  郁己が大好きなその薄い唇は大きなため息を漏らした。  だってそんなはずはない。  自分だけが直人を好きなのだ。  だから郁己は首を振る。  信じてはいけないと自分に言い聞かせて――。 「郁己」  名前を告げられて胸が大きく震える。  ブランコに座っている郁己の頭上から影が被さった。  同時に薄い唇が郁己の口を塞いだ。 「結婚してくれるね? 頼むからイエスと言ってくれ……」  互いの唇が離れるのと同時にリップ音が鳴る。  言った彼の声は掠れていた。  彼は本気で自分と結婚をしたいとそう言っているのだろうか。  真実を見極めるため、直人の目を窺えば、瞳の奥に炎が宿っているのが見えた。  ああ、彼は自分を欲している。

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