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2 学校はじまる

 昼休み、ちょっとした話し合いのために生徒会を招集した。 「薫君だっけ? さっそくいじめられてるみたいだね」  会議終わりで柏木が話しかけてきた。 「あぁ、らしい」  その話はもう児玉から聞いている。親衛隊が見つけ次第、風紀に通報はしているので、大事に至ることはないが、小さないじめはやめさせることはできないそうだ。親衛隊には薫は家の使用人だとつたえ、薫は家のお目付け役とも話した。 それでもおもしろくない連中もいるだろうし、悪名高い習刊天白が薫の写真をでかでかと乗せ、幼馴染、主従関係? 押しかけ婚! 会長の嫁がいた!? なゴシップ記事を連載していた。何度か、やめるように言ったけど、聞きやしない。これのせいで校内で薫と会うことは避けている。  正統派なニュースをのせる晴々新聞の方にちゃんとした記事ものせてもらったけど、焼け石に水だ。誰もかれもが面白い方を信じ、話す。本当のことなんてどうでもいい。  いじめの主犯は中学からのエスカレーター組の俺の巡回を楽しみにしていた層というのが児玉の見解だった。自分の過去の巡回を悪いことだとは思ってない。行為自体はWINWINの関係だったと思うし、むしろ俺がホストとして果たしたと思う。だから、因果応報では断じてないと思うのだけど、今、薫が困っているのは俺のせいではある。 「なら、巡回したあげればいいじゃん」 「無理だろ。なんのための監視だよ」  くどくど愚痴をはく。柏木はなにをするにも軽いので、愚痴を吐くにはいい相手だ。 「目をかいくぐるとか簡単だろ。生徒会で遅いとか、言い訳は何とでもなるし、部屋もここでも、マスターキーでどこでも使い放題じゃん」  会長権限でマスターキーは持ってるがそんな悪用はしたくない。柏木は助言も軽い。 「感づかれたら、きまずいし……」  そうこぼすと、柏木が顔をしかめた。なにをいまさらと、言いたいことはわかる。でも、薫にそういうことを知られるのは嫌だ。薫がどこまで知っているのかは知らないが、自分のそういう面は彼に知られたくない。 「じゃあ、いじめられるの見とくしかなくね? 会長がなんかしても逆効果だし。会長が主人なんでしょ。助けられるのも嫌なんじゃない。暴力沙汰まで発展したら、事件として介入の必要があるけど、不良関係の話じゃないんだし、大丈夫でしょ」  柏木の言うことも一理はあって、薫を助けると薫はそれに恐縮するだろう。だから、児玉に言って遠回しに牽制を入れるしかない。それも最小限にしかできないと、会うたびに釘をさされている。  いくら権力を持っていても、自分の弟分一人守れない。大きくため息をついた。

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