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8 使用人の来襲
がらがらと音を立てて入ってきたのは、さっき別れた薫だった
「源氏様、お背中流そうと思ったのですが」
「いや、いらんから!」
突然の薫の登場に思わず大声を出す。目の前の男はどうみても男だが、成長途中で細く白い。ただの男の裸には、性欲を抱くわけではないが、今は絶望的にタイミングが悪いし、横の立派な成人男性二人の見た目の落差では薫が妙に生々しい。
「うわっ、色、白!」
「お背中流し、とかなにプレイだよ!!」
後ろの二人がうるさい。
「ここは、タオルで前隠すの禁止だよ?」
何を思ったか、柏木がそう言った。薫はそうなのかという顔をして、タオルを手からさげて、フルオープンにする。そこも昔と違って某アニメのぞうさんではなくなっていて、だけど自分とは違うし、毛も薄い。薄い体にくびれた腰、そこにきょとんとした顔がのる。
「そんなルールないっていうか、お前はここくんな」
急いで風呂から上がって薫を脱衣所の方に向ける。
薫が妙にエロいがいけない。目の前の男はきれいな顔で物を揺らしている。なにも知らない青年が裸で、ものをゆらして、無防備でいるのは、とてつもなく下半身にきた。
ひゆーひゆーと後ろの二人が、囃し立てるのをにらむがまったくきかない。
「細くてほねっぽいのが、エロいねー。おれ、タイプー」
「けがれない感じ、喘がせたいなー」
「黙れ死ね!」
源氏は、入ったばかりの薫をロッカーに戻した。
「もう薫、シャワーしたんだろ?」
「源氏様が、よそよそしかったので、裸のつきあいもありかとおもいまして」
他意のない薫の言葉が胸に刺さる。成長した薫がなんかエロいから部屋にいずらかったとはとても言えない。
「久しぶりで、声も見た目も変わってたから、ちょっとびっくりしただけだから。すぐにいままでの関係になるから」
冷えるとまずいと思って、自分のバスタオルをかぶせた。うすいピンクの乳首もついでに隠す。
「よかったです」
ふわっと薫が微笑んだ。そういえば、ちいさいころはよく薫の髪をふいてやっていた。ちいさいころの薫と今の薫がかさなって、エロい目で見ていた自分が猛烈にはずかしく、罪悪感に打ちのめされる。
「ここの風呂場はあぶないのもいるから、できれば、シャワー室を使ってほしい。浸かりたかったら、時間外に予約もできるから」
過保護だとはわかってる。同時にこれは娘を持つ親的な過保護だって信じる。
「わかりました」
「よし、いい子」
薫の頭を撫でた。細くつるつるな髪をすく。やっと、これが出来た。薫が少しねむそうに顔を緩ませる。薫の裸をじっと見た。これは今の薫で、弟同然の男の裸で、自分はそこになにも思わない。自分は危なくない、薫の信頼できる兄なんだと、言い聞かせた。おれのかわいい使用人で弟。
「えっ、どういう状況?」
二人が向かい合ってるときに特別クラスの藤原がはいってきた。藤原がとても冷静に服きたら? と言ったので、服を着て、薫にも服を着させた。でばかめして、脱衣所を除いていた二人も藤原が怒って対処した。あとで、お礼を言おう。
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