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5 学校はじまる

 とりあえず、バッティングセンターに行った。初めての薫はなかなか打てず、薫の隣にたって、1球打つごとに指示をする。細い腕と足で、バットを持つ姿は似合わない。 「難しいです。玉とバット同じ大きさぐらいですよ」  バットを見て不思議そうに言う。 「だからあたったら、気持ちいいんだよ」 球が飛んできたのでうった。 カキーンと大きく球が飛ぶ。 「すごい」  もう一球、次もうまい具合に飛んだ。薫は、すごいすごいとつぶやいた。 「会長だ!」  すぐそばで声がした。通路で何人かがこちらを向いてる。知った顔じゃないから、親衛隊ではないだろう。ライトなファンというよりも、有名人に出会った一般人の感覚に近いかもしれない。軽く手を上げる。 「めずらしいですね!」 「たまにはな。いつも生徒会室にひきこもってるから」 「がんばってください」 通路にいるのが邪魔だと理解しているようで、その子たちは奥の方にはけていった。  残り3球、薫はどれも打てなかったが、ほんのり汗をかいて、本人はそこそこ満足のようだ。  少し時間もあるので、特別ほしいものもないが、ホームセンターの方によることにした。薫が以外にも、興味があるものが多いようで、ゆっくりと歩く。通る人、通る人にあいさつをされた。連れだって歩くと目立つ。来る前から、一緒に外に出るのはいじめを助長するのでは、と思っていた。だけど、いっしょに遊びたい。そんな矛盾ばかりをずっと考えてる。 「源氏様はにんきものですね」  周りに人がいないガーデニング用品のフロアだった。薫は花の種を眺めてる。薫は庭の世話は仕事だけど、草花も好きだった。幼いころは薫の苦にならない仕事を与えていたんだろう。家の外、薫はいつもジョウロで庭の草木に水をあげていた。 「まぁ、人気だから会長になれたし」 「すごいと思います。僕はなにもないのに、そんな人気の会長のそばにいたら、みんなにやっかまれるのは当然です。でも、僕はあなたのそばに入れてうれしい」  薫が振り向く。切りそろえられた髪。いつもこっち向かないかなと、植木ばかりみる薫を目で追っていた。 「だから、僕、今日、こうして外に連れ出したもらってすごくうれしかったです。また、連れ出してください」  にっこりと微笑んだ。 「あぁ、……うん」 いつだって聡い子だった。俺の矛盾に薰は気づいていた。 「薫は、源氏様のためなら、なんだって大丈夫なんです」  大丈夫、の単語はリフレインする。薫はとてもたのしそうだったのに、なぜか嫌な予感ががした。

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