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2 ふたりでおでかけ
「なん件か服屋まわるから、好きな感じのあったら言って」
薫には服の好みなどやっぱりないので、適当に服屋街を歩く。以前帰ったときに、島津さんに聞いたところ今の服は支給で、それ以外にいままで私服を持っていたことがないそうだ。私服がないのは常識的におかしいので、服は絶対に買うから遠慮しないでと話した。
通りの服屋を見て回ったけど、薫はなにがいいかさっぱりわからない様だった。気を使ってなにか話そうとしては困った様子をしている。
「俺の好みでいい? センスはあるかわからないけど」
「はい。お願いします」
通りの端まで行ったので折り返してよさげな店に入った。いくつかの服を持たせてとりあえず試着室につっこむ。
「着たら声かけてな」
中で着替えてると思うと邪念が浮かびそうなので、公式をできるだけ浮かべる。そういえば、薫はいかにもスーパーで買ったかんじのトランクスだった。たぶん使用人の誰かが買ってきたものだろう。パンツも買って帰ろうか。
「どうでしょうか?」
カーテンが引かれた。いかにもおっかなびっくりという様子で、薫が出てきた。身に着けてるのは灰色のスキニーとTシャツにオーバーサイズの淡い紫のサマーカーディガン。
「かっ」
かわいい。なんじゃこれ。思わずこえが出た。いやでも、そうだ、なんでもいいから試着させようと選んだ割にこんなにも自分の好みガンガンのものを選んでたとは。細い足を強調するスキニーと、その小さいお尻が隠れるか隠れないかというサイズのもえそでカーディガン。それも薫の真黒な髪にあうかつエロい、淡い紫という選択。
「まず、これ、一式。あと何パターンか。買った方がいいな」
そこからヒートアップして薫をたっぷり着せ替え人形にし、自分の好みの服ばかりを着せる。子供を着せ替え人形にする親の気持ちがよくわかる。うちの子がいちばんかわいい。
「買いすぎじゃないでしょうか。あまり私服になることもないでしょうし」
「なんで、家でも着てよ。そんな高いもんでもないんだから」
「わかりました」
最終的にいくつものショップの袋をたくさん抱えてることになってしまった。春夏物はこれでいいから、秋冬も絶対に自分が服を買いに連れてこようと心に決めた。
夕飯どうしようかと言ったところで、雨が降ってきた。逃げるようにレストランに入る。
ゲリラ豪雨のようでそのうちやむだろうと夕飯を食べて外に出るが一向に止みそうになかった。
情報を見るために携帯を眺めてると、学校の近くの駅が土砂崩れで運休とお知らせが出た。あそこは山手だから小規模な山崩れはたびたび起きる。
「だめだ。帰れねぇ」
あいにく、他にもこの豪雨で電車は止まってる。バス停は遠い。
ほかにどうにか帰る手段を考えるが、タクシーしか考えられない。それも、この雨の中どれくらい待つか考えるとうんざりする。
「泊まりますか?」
「えっ」
「どこか、泊まりましょう。明日は休みですし」
静かに話す薫の声に俺は素直にうなづいた。
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