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2 さみしいお誘い

 部屋に戻ってきた薫は赤い顔をしていた。今日は先に寝ると言って、眠りについた。  次の日、教室で薫が倒れたと児玉から連絡がはいり、もう授業も終わりの時間帯だったので保健室によって薫を連れて帰った。 保健の先生曰く疲労と睡眠不足だろうとのことだ。 「源氏様、ごめんさなさい」  しきりに薫は謝ってそれをあやしながら部屋に戻る。  薫の表情は暗い。顔色も悪いので、ベッドに寝かしてたべやすいスープを作った。   「薫、あとで、話があるんだ」 「はい」  薫の目がおびえる。そのおでこにキスをした。 「そんな緊張しなくていいよ。俺は、薫には優しいだろ」 「はい」  薫は少し回復したようで、風呂に向かった。  俺も風呂に向かう。昨日から、薫のことは注意深く見ているし、部屋に一人にしていないから、まだ俺があの辞書にきづいていることに気づいてはいないだろう。  ただ、薫の疲労は確実にあれが、原因で、何なら薫がここに送られてきた理由もあれが原因なのかもしれない。薫は確実に鶴に言われてあれを仕込んでいる。  鶴はどんな動画がほしいのか。それは昨日から、ずっと考えて、答えは出そうにある。    互いに風呂をでてから、はやばやと薫をベッドに寝かせた。  まだ早いけど、薫は特に抵抗しない。 「横にいっていい?」  薫がうなづいたので、横に並んで寝転んだ。薫のおでこにそっと触れると薫は今日初めてふやけた安心した顔を見せた。 「だいぶ、楽になった? 話しをしても?」 「源氏様」  薫はふやけた顔をすぐに曇らせた。薫は起き上がり正座の姿勢をとった。  目は俺に向いている。小さいころからべてずいぶん凛々しくなった。まだまだ幼いけど、入学して少しづつ背が伸びた気がする。どこまで伸びるだろう。どこまで伸びても、きっとかわいい。きっとずっと好きだ。薫にどんな思惑があっても、なにがあっても、好きだ。  俺も起き上がって薫に向き合う。 「薫。俺は」  薫の顔に手を伸ばす。薫はびくりと震えた。 「源氏様、」 薫の声は破棄がない。迷子の子供のような声だ。 「薫、俺は、お前が好きだ」 薫は大きな目を潤ませてい俺を見る。 「それは、だめです。源氏様」 「なんで?」 「ダメなんです」 薫の声は必至だ。 「なんで? 薫? 俺の事がきらい? 迷惑?」 「ちがい、ます。ただ、それは、だめです。薫は、薫にはその資格がないのです。使用人すら薫にはおこがましい」 薫は自分の顔を覆った。声にちからがない。 「あるよ、薫は俺に何をしてもいい。薫は俺の使用人だけど、俺の好きな人だから、好きな人には俺、何されてもうらぎられてもいいタイプだから」 薫ははっとしたように俺を見た。 「薫、鶴に、なにを言われた。薫の本当の目的はなんだ」 「言えません」 「俺、月曜、言ってた外部の整理工学の大学の出願届出すよ。そしたら薫は、怒られる?」 「なんで」 「そこだろ。鶴が、俺の進路を思うようにしたいと思ってる。それで、薫は脅されてれる。何を言われてるか言ってくれないか薫。どう転んでも、薫の悪い風にはならない」 「薫は、薫はどうなってもいいのです。薫は源氏様が、薫のせいで源氏様の道が閉ざされるようになるのが嫌なんです」 「薫、俺は別に今から、漁師でも、花屋でも、リーマンでも、なんになってもいいんだ。俺は敷かれたレールがたまたまあったからのってるだけで、それが幸せなんて思ってもない。俺は、薫がいたら、どこでもなんでも、幸せだよ。逆に薫が不幸せだと、俺も俺も不幸せだ。薫も、そうだろ?」  薫の大きな目から涙がこぼれた。ぽろぽろとそれはとめどなく流れる。透明できれいな涙。 「なぁ、薫。別に薫が言わなくても、俺は俺で探りを入れる。薫が言わなくても、そのうち調べはつく。ぜんぶ話して」  ここまで攻めても薫は何も話さない。もともと我慢強い子だ。 「薫が、俺に好きって言ったのは、本心? それともそう言って迫るように誰かに言われた?」  薫が顔を上げた。目はぐっと開かれて落ちそうだ。薫の腕に手を伸ばす。薫の体がおののく。薫はおでこにキスも瞼にキスも嫌がらない。スキンシップ過多だった俺が子供の頃していたなごりだ。今は体を触られることを意識している。彼自身に性体験はなく知識も入れるところがないはずなのに、そんな反応されるのは、誰かが知恵をいれたのだ。体をつなげること、男同士でもできるということ。ただ、少し友人からからかわれたというぐらいなら、こんなにも意識しない。薫の腕を引っ張って体を抱き寄せた。薫は緊張して固い。これは、ただ緊張してるんじゃない。完全に怖がっている。キスはあんなに幸せそうなのに、俺が遊んでるのはすべて有志だ。セックスが怖いという知識にはならない。鶴はいったいなにを薫に吹き込んだ。薫になにをさせて俺になにをさせて、自分の有利に持ち込むつもりだ? 「薫、なんて言われた。俺を篭絡して、俺を仲間にしろって? そうじゃないだろ」 「違います。言えません。ごめんなさい、薫は、薫は、最低なんです」 「薫、謝らなくていい。薫は何も悪くない。言ってごらん。じゃないと、このまま薫を犯す」 「どうして」  薫は一気に青ざめた。 「薫はそうやって、鶴に従って、俺のことなんてどうでもいいんだろ。でも、俺は薫が好きなんだ。だから、手に入らないんだったら、このまま嫌われてもいいから、犯す」  薫をそのままベッドに組み敷いた。涙で、顔も首元まで濡れてしまっている。 黒く散らばった紙が白に生えてきれいだ。 「逃げなくて、いいの?」  スエット上から薫の胸から腰をなぞる。  薫は俺を見てる。ぐりぐりとした目がつきささるように見てる。 「薫、好きだよ」  薫のおでこにキスをした。目にもキスをした。そうしてみた薫の口元がゆっくりと動く。 「源氏様、薫は、薫は、ダメな使用人なんです。源氏様に好かれる資格がありません。ただ、薫は、源氏様を」  薫が自分の顔を隠す。すすり泣く声がする。 「源氏様、どうか、薫を犯さないでください」  薫は震える声でそういった。俺は別にいたぶる趣味はなかったけど、好きな子が抵抗しないで震え泣いている体を組み敷くのに、新しい扉が開きそうだった。  薫は動けずに静かに泣いている。手を服の下に入れた。肌はすべすべでほてっているのかしっとりとして手に吸い付く。  薫の首元をなめた。薫の汗のにおいがして、興奮する。あぁ、もう、止まらない。かわいそうな薫。耳元でささやいた。 「薫、好きだよ。薫は何も悪くないから。口を開けて?」  指で薫の口元を撫でる。唇を噛んでいたのか赤い。口の端をなめたら、口が反射的に開いた。すぐに舌を侵入させて口内をむさぼった。苦しそうな薫の頭を抱えて、何度も何度も位置をかえてキスをする。暖かい口内でどうにもできない薫の舌をなめる。  口を放すと、薫は荒く息をした。 「薫、今日俺は手荒く、犯すけど、嫌いになんないでね」  そっと薫にだけ聞こえるように囁くと、薫は熱い息を漏らした。  最中、薫はずっとすすり泣いていた。うつ伏せで、声を押し殺して、それがかわいそうだけど、ただ、このまま犯すのも、互いにつらいだけだから、お互いに裸になって、彼の体に触れるようにした。人に触ることも触られることも嬉しいことだと教えてくれたのは幼い頃の彼だったから、俺の気づかいは届くかはわからないけど、彼の腰を撫でながら、挿入して、はてた。

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