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2 明けて、朝
ぐっと近よられた薫は羽織った上着のパジャマだけで、昨日の情事の後は濃く残ってる。
「薫は、使用人です。男同士で、何もしらない薫を惑わしたくない。なによりも家族だと、源氏様には何度も言われました。でも、薫は、薫は、源氏様にほしいと思われたい。薫は、源氏様に自分以外の人を抱いてほしくない」
薫は膝で立つと座っている俺よりも高い目線でおれの顎をとった。キスをされる。ゆっくりと入ってくる舌は、俺の舌に絡ませた。つたなくて、だからこそ、しびれるぐらい気持ちいい。唾液で濡れた唇で薫はゆっくり息を吐く。緊張してるのか吐き出される息は細い。
「薫は、源氏様を裏切りました。源氏様に抱いてほしくて、自分の私欲のために、鶴様さえも利用して、優しい源氏様を裏切ったのです」
「違うよ。薫は武田の使用人で鶴に吹き込まれただけだから、薫は何もわるくない」
「薫は、それでも、源氏様につぐなわないといけません。その動画の処遇も源氏様に任せます。鶴様には動画はやっぱり取れないけど、どうにか源氏様のことを冷遇しないでほしいと頼んでみます」
「言わなくていいよ。どこの誰が好きな男にそんなことさせんだよ」
「薫はそれでも、自分で自分を許せないのです。源氏様の不利になるとわかっていて動いてしまった。一生をかけてつぐないたいです」
一生とはかんびな響きだ。ここをでてからも絶対疎遠になりたくないと願っていた俺はだから手を出さずに兄弟で痛いと思っていた。
「本当に、一生いてくれる」
言葉のあやだとわかっていたのに、思わず反復してしまった。
自分の声が幼く聞こえて、自分で言ってから後悔する。
「嘘、バカなこと言った」
「源氏様がそういうのなら、それで償えるのなら、薫は一生そばにいます」
「うそだよ」
「結婚しましょう」
薫はまっすぐな目で俺に言った。
「源氏様は言いました。恋人の関係は破たんするものだから、兄弟になりたいと。兄弟とはいつか疎遠になるものです。使用人もお金がなければ雇えない。ただ、恋人になり、夫婦になれば、末永く、結ばれる。家族になれます。薫は、使用人でも弟でもない、薫として、源氏様のそばにいれます。源氏様、薫はいつでも誓えます。結婚しましょう。」
薫は俺の手を取って薬指にキスをした。まぎれもないプロポーズだ。こんなことどこで覚えてきたのか。
「今時、離婚も普通だよ」
「源氏様が薫を嫌いになっても、薫は源氏様をもうぜったいに裏切りません」
薫が俺のあたまを両腕で抱きしめる。そしておでこにキスをして、顔面にキスの飴を降らせる。
「源氏様、好きです。キスをしたら、するだけ好きになります。源氏様も薫にキスをするときこんなきもちだったんですか」
「うん。かわいくてたまらなかった」
「源氏様もかわいくてたまらないです」
チュッとリップ音をさせて唇同士でキスをする。薫はこんなに男前だっただろうか。自分より大きな男にかわいいと抱きしめて、プロポーズするような。
「薫、かっこいいな」
「かっこいい薫は嫌いですか?」
「好き。なぁ、このまま、もう一回してもいい?」
「はい」
「今度は目いっぱい優しくするから」
「薫は、源氏様になら、何をされても嬉しいです」
薫を押し倒すと、薫が俺の手を取り、指をなめた。優しくするって言ったけど、もう無理だなとあきらめた。
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