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第一章・15話

 そうだ、と雅臣は身を乗り出した。 「旅行しようか。二人で」 「旅行?」 「音楽旅行。いろんなピアニストの演奏を聴いて回ろう」  素敵だ、と空は目を輝かせた。  それが実現したら、どんなに楽しいだろう。 「でも、雅臣くん忙しいだろ?」 「1週間くらいなら、なんとかなるよ。行こう」  少し顔色の悪い、空。  初めて会ったあの頃に、戻ったみたいだ。  彼を元気づける為なら、何だってしよう。 「日程が決まったら、知らせるから」 「楽しみにしてるよ!」  その日のレッスンは、久しぶりに楽しかった。  先生も、何かいいことがあったのか、と褒めてくれた。  神家の専用機で、ひとっ飛び。  秋のドイツを、二人は訪れた。 「すごい、すごい! 外国だ!」  幼い子どものようにはしゃぐ空に、雅臣は微笑んだ。 「まずは、ホテルでくつろごう。今後の予定も話すよ」 「うん!」  身辺警護の人間は付いているが、三歩下がって行動してもらっている。  初めて雅臣と二人きりになれた幸運を、空は喜んだ。  ドキドキする。  ワクワクする。  ああ、今ピアノを弾いたら、すごく楽しく演奏できそう! 「空くんのために、特別な部屋を用意したよ」 「ピアノだ~!」  完全防音の部屋で、空は心ゆくまでピアノを弾いた。 「いい感じ。空くんのオリジナリティが出てるよ」 「ホント!?」

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