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第一章・17話

 時が、止まったようだった。 「明日の演奏会、私のために弾いてくれないかな。空」 「雅臣くん、……雅臣のために」 「そう。私のためだけに」  雅臣は、空をそっと抱きしめた。 「舞台の袖で、ずっと見守っているよ」  歓喜で、震えが来た。  雅臣くんが。  雅臣が、キスしてくれた。  卑しいΩだった僕を、抱きしめてくれた。  空の眼に、涙が溢れた。  明日、思いきり楽しんでピアノを弾こう。  雅臣のために。  その日の晩、雅臣は初めて空を寝室へ誘った。 「あ。あぁ。はぁ、はぁ、んッ」  まるで初めてのように、空はベッドで丸くなっていた。  後ろを丁寧に解してくれるのは、雅臣の指。  それだけで感じて、漏らしてしまう。 「あ、そこ。ダメぇ、雅臣ぃ……」 「解ってるよ。ここを苛めて欲しいんだな?」 「ち、違ッ! あぁんッ!」  売りをやっていた時の声とは違う、本当の嬌声を空は吐いていた。  雅臣が、僕の身体に触れてくれる。  僕を優しく愛してくれる。  そして……。 「スキン、付けるから待って」 「雅臣、付けないで。僕の内へ、そのまま出して」  誰にも許したことのない行為を、空は願い出ていた。
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