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第一章・19話

 奥まで捻じ込んで、内に放精してくれた雅臣。 「あぁあ! んッう! あぁあん!」  熱い濁流を身体の最奥で受け止め、空は悦びの悲鳴を上げた。  あぁ、気持ち悦い。  セックスが、こんなに気持ち悦いものだったなんて! 「大丈夫?」  事後も体をいたわってくれる雅臣が嬉しい。 「大丈夫じゃないよ、もう……」  もうダメ。  雅臣とのセックスに、すっかり溺れてしまった。  もう、彼でないと感じない。  誰も、彼の代わりになれない。 「愛してるよ、空」 「雅臣……」  肌を擦り合わせて、二人は酔った。  恋人同士の行為に、酔いしれた。 「ね、雅臣。もう一回」 「ダメダメ。明日は空の、音楽界へのデビューの日なんだから」  体力を、残しておかなきゃ。  そう言って、雅臣は空の手を取りその指にキスをした。  音楽の神に愛された、魔法の指に口づけた。 「何だか、夢みたいだ。僕がピアニストとして歩み始めるなんて」 「夢じゃないよ。現実にするために、あんなに努力も重ねたろ?」  うん、と空は静かにうなずいた。  僕は。  僕は、ただ、雅臣のためにピアノを弾いてるんだけどな。 「ね、明日は僕の一番傍で聴いていて」 「客席の、最前列?」  ううん、と空は首を横に振った。 「舞台の袖で、聴いててほしい。僕、一生懸命弾くから」 「解ったよ、空」  演奏の後には、大きな花束を君に捧げるよ。  二人はもう一度、口づけあった。  恋人同士の、キスをした。

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