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第二章・8話

 瑞は、ここにはいない高橋を呪った。  一体全体、どんな手品を使ってこの場をしのいでいたのやら! 「できないなら、他所に頼むけど」 「お待ちください」  瑞は、真っ白になってしまった頭の中に浮かんだ人物にすがった。  武藤さん!  僕、どうすれば……! 『困ったことになったら、すぐに電話しなよ?』  別れ際にかけられた、優しい言葉を思い出した。 「申し訳ございませんが、一度社に連絡してもよろしいですか?」 「いいよ。早くしてね」  余裕しゃくしゃくの男の態度を忌々しく感じながら、瑞は退室して電話を掛けた。 「武藤さん、お疲れ様です。お忙しい所、すみません」 「どうした? 何かあったの?」  クライアントがごねている、との報告を聞いた涼真の返事は早かった。 「大丈夫、引き受けてから帰ってきて」 「でも、無料で。それに、3日だなんて」 「後始末は、俺に任せていいから」 「でも……」 「高橋が手品を使ってたみたいだけど、俺だってそれなりのマジックは得意だよ」 「すみません」  瑞は、涙声だ。 「いいからいいから」 「すみません。すみません」  何度も謝り、瑞は電話を切った。 「これは、明日のお昼もお菓子だな」  苦笑して、涼真は電話を切った。

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