36 / 93

第二章・13話

「嬉しいよ、白河くん。いや、瑞」 「武藤さん、それじゃ……」 「俺も、好きだ。瑞のことが」 「武藤さん」  そっと抱き合い口づけると、キスはチョコレートの味がした。  甘い甘い、キス。 「今夜は……、泊って行ってくれますか?」 「俺のこと、名前で呼べたらね」 「……涼真、さん」 「もう一声」 「涼真」  よくできました、と涼真はもう一度瑞にキスをした。    心地よいアロマの香る寝室で、二人は改めて抱き合った。  そして、改めてキスしてくれる涼真に、瑞は嬉しくなった。  これまでの相手なら、ベッドに速攻で押し倒してくるところだ。  自分の放つフェロモンがそうさせているのだ、とは解っていたが悲しかった。  でも、涼真は違う。  涼真は、他のαとは違うのだ。  彼の前では、Ωである自分を卑下せずに済む。  おおらかに、全身で瑞を受け止めてくれる涼真。

ともだちにシェアしよう!