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第二章・13話
「嬉しいよ、白河くん。いや、瑞」
「武藤さん、それじゃ……」
「俺も、好きだ。瑞のことが」
「武藤さん」
そっと抱き合い口づけると、キスはチョコレートの味がした。
甘い甘い、キス。
「今夜は……、泊って行ってくれますか?」
「俺のこと、名前で呼べたらね」
「……涼真、さん」
「もう一声」
「涼真」
よくできました、と涼真はもう一度瑞にキスをした。
心地よいアロマの香る寝室で、二人は改めて抱き合った。
そして、改めてキスしてくれる涼真に、瑞は嬉しくなった。
これまでの相手なら、ベッドに速攻で押し倒してくるところだ。
自分の放つフェロモンがそうさせているのだ、とは解っていたが悲しかった。
でも、涼真は違う。
涼真は、他のαとは違うのだ。
彼の前では、Ωである自分を卑下せずに済む。
おおらかに、全身で瑞を受け止めてくれる涼真。
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