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第三章・16話
「稀一さん……、ありがとう……」
どれだけ地に堕とそうとしても、すぐに大きな翼を広げて高く舞い上がってしまう。
稀一の誇り高い仕草に、蒼生は震えた。
「これで、また付き合ってくれるな?」
「はい」
蒼生の返事に、稀一は照れたような顔を向けた。
「はい、じゃなくて、うん、と言ってくれないか」
「え?」
「今度は対等の人間として、付き合いたいんだ。敬語はもう……、やめよう」
蒼生の瞳から、ぽろぽろと涙が零れた。
「ほら、泣かないで」
「はい……、うん……」
涙を流す蒼生の背を、稀一は優しくさすってくれた。
頬にこぼれた涙の粒を、静かに吸いとってくれた。
二人で、熱いキスをした。
稀一はいつものようなあっさりとしたキスではなく、舌を絡め唾液をすすり、蒼生を食べてしまうようなキスをした。
恋人であっても、他人。
そんな人間の咥内は、汚れたものと感じていた。
これまでは。
だが、今は違う。
蒼生が好きだ。
愛している、蒼生を。
蒼生に、参ってしまっている。
この俺を捕まえて、最低男と格付けした蒼生。
そんな強い蒼生が、好きだ。
そんな勇気ある蒼生が、好きだ。
今こそ、蒼生と一つになりたいんだ。
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