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第四章・14話
都の言葉に、男子生徒はショックを受けたようだった。
「俺、夏目のこと3回も抱いたんだぜ?」
「僕が欲しかったのは、君じゃなくってお金。ごめんね」
「神谷からは、いくらむしってるんだよ! もう、あいつとヤッたのか!?」
「声、大きいよ!」
がたん、と椅子の動く音がした。
雄翔が立ち上がり、こちらに来るのだ。
「と、とにかく! もう勘弁してよ! あっちに行って!」
都は必死で男子生徒を押したが、彼はびくともしない。
ついに雄翔は、二人の間に割って入った。
「都は今、俺と契約中なんだ。邪魔しないでくれないか?」
「金にモノを言わせやがって。いくら払ってんだ」
「一日1万円。君にとってそれが不服なら、増額しても構わないが?」
雄翔の異様な迫力に、男子生徒は怯んだ。
しかし、このまま引き下がるのも癪だ。
彼は、とっておきの捨て台詞を吐いた。
「どうせ夏目は、俺のお下がりなんだ。それでよければ、せいぜい可愛がってやるんだな」
「どういう意味だ?」
「こいつ、一回5千円で身体売ってたんだぜ。俺なんか、3回も……」
その途端、雄翔は男子生徒の胸倉をつかんで締めあげた。
「……二度とその言葉、口にするな。もし言えば、この学校に居られなくしてやるぞ」
「ひッ!」
乱暴に襟から手を放し、雄翔は彼を睨みつけた。
「消えろ」
男子生徒は、後も見ずに廊下を駆けて行った。
一部始終を、都は見ていた。聞いていた。
足元が崩れ落ちるくらい、動揺していた。絶望していた。
(もうダメ。雄翔にバレた)
お坊ちゃんで潔癖なところのある彼は、僕をきっと許さないだろう。
軽蔑し、汚いものを見るような目で、ねめつけてくるだろう。
しかし、雄翔の声は柔らかかった。
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