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第四章・20話

 固くこわばったままの都の体を、雄翔はキスをしながら静かに横たえた。 「あ、んぁ。はぁ、はぁ、あぁ……」 「緊張してる?」 「見れば解るでしょ、もう」  あの、さ。  都の傍に横たわり、雄翔はもう一度キスをして言った。 「別に、無理にセックスしなくてもいいんだから。だから、もっとリラックスしてくれないかな」 「え? エッチしなくてもいいの?」 「いいよ。何か……、都の体はちょっと変だ」 「ずいぶん失礼なこと、言うね」 「ごめん。でも、都はΩだよね。フェロモンというか、αを惹きつける何かが見当たらないんだ」  都は、息を呑んだ。  見透かされてる。  僕の変調、手に取るように解っちゃってる! 「ごめんね、エッチできなくて」 「え?」 「僕。僕の体、雄翔の言う通り、何か変なんだ」  Ωとしての発情が、間近だったこと。  体が火照り、薬を飲み始めていたこと。  お金目当てで他人に抱かれるようになってから、どんどん体の火照りが無くなっていったこと。  終いには、誰に抱かれても感じなくなってしまったこと。 「僕、不感症になっちゃったんだ」  ぽろぽろと涙をこぼす都を、雄翔は優しく抱いた。  長い腕で、柔らかく包み込んだ。 「辛かったんだな、都。俺、もっと早く都に手を差し伸べればよかった」 「雄翔のせいじゃ、ないよ」 「今夜は、もう寝よう」 「う、うぅ。うう、っく」 「泣いていいよ、都。我慢しないで、いっぱい泣いていいよ」  都は、雄翔にしがみついて泣いた。  泣いて泣いて泣き疲れて、眠ってしまうまで、泣いた。

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