客に見せる魔女のイメージは、モンスター居住区に移ってから思い付いた。この町で暮らす者には神秘さが求められる。身勝手な幻想だが、お陰でアスカも人間外種という別物になれた。人間種で犯した恥ずかしい過去が消せたのだ。喧嘩っ早く、睨みを利かせた程度の過去でも、一匹狼気取りで世の中を冷めた目で見ていた自分を両親には知られずに済んだ。 　魔女に成り切って、人間の客に男であることを隠す。しかし、女と思わせるだけでは衝撃も薄い。強烈な印象で怖がらせたい。喧嘩上等で生きて来たアスカを、アスカたらしめるには必要なことだった。魔女の装いは自分を立て直しながらも、本質を保つには持って来いだった。 　時に優雅に、時に仰々しいまでの薄気味悪さで、モデル並みと称賛される体でゆったりと動き、妖しさを見せる。マントに隠された顔には秘密めいた艶やかさを映し出す。アスカは別の自分を演じることで解放され、逆に本当の自分になれた気がした。