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家族の証し?

 モンスター居住区に移って半年、占いを始めて三か月、仕事も生活もアスカの思惑通りに回った。テーブルの向こうに座る〝クソマジにヤバい声の男〟が現れるまでは、すこぶる順調だった。  占い師としては駆け出しでも、そこそこ付いた客の評判も上々で、誰もその正体を暴こうとはしない。魔女の呪いは恐ろしい。アスカは見事に客にそう思わせた。  モンスター居住区のアスカは正体不明だ。アスカという名も、登録変更を申し入れた際に、アスカ自身で名付けたものだ。登録変更書類には、本名を忌み名にし、新たに通り名を希望するかどうかの欄がある。悩んだ末に、希望するにチェックを付けた。アスカの本名は守秘義務の範囲となり、アスカと両親だけが知り得る家族の証しに変わった。  生まれた時に名付けられた名前を記憶する者は、まずいない。親類縁者でさえ、〝あの家の息子〟と呼んだ。子供同士の付き合いでも、幼い頃から名字で呼ばれ、名前は忘れ去られている。

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