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笑うに笑えない?

「はっ……い?」  またも同じ返事を口にしてしまった。他にどう返せばいいのかもわからない。アスカはフードを揺らし、その奥から男を窺った。笑っていなかったのを救いと思った。  仕方がない。アスカは素直に認めることにした。聖霊達のワクワクに文句は言えない。悲しいかな、ヴァンパイアであることを除けば、この男はアスカの〝もろタイプ〟なのだ。  〝もろタイプ〟を前にしても、一目惚れという理不尽な病に侵されずに済んでいるのは、男がヴァンパイアの恐怖を背負ってくれているからだ。それも小部屋の片隅で息を凝らす精霊達には、ごちそうになる。相容れない者同士の悲恋は、修羅場以上の臨場感をもって噂される。熱い溜め息と共に、涙するといったところだ。  アスカには笑うに笑えない話だった。『霊媒』のせいで初恋も知らないままだというのに、〝クソマジにヤバい声の男〟にビビッとし、まさしくワクワクしていたのだ。哀れというしか他に言葉もない。

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