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一枚噛んでいる?

 特殊能力者であることは、恋をするのに障害とはならない。『人間外種対策警備』に所属する仲間の能力者達は、人間種、人間外種の別なく、よろしくやっている。居住許可証に『霊媒』と記されている能力者も、同じようなものだ。うぶでもなければ、ヘタレでもなかった。  『霊媒』と一括りにされているが、他の能力者とのあいだには大きな違いがある。聖霊達のろくでもない喋りが聞こえるのかどうかだ。つまり彼らは余計な情報に惑わされずに済む。恋もそれなりに楽しめるということだ。アスカには羨ましい限りだが、アスカだけが持つその能力は、恋だけでなく、能力者の立場をも微妙なものにした。  アスカにはろくでもないと思える噂でも、モンスターには命取りになり兼ねない記憶を秘めている。時代の変化を迎える前に、モンスター達は先手を打って、聖霊達の口を封じた。人狼はヴァンパイア程に強引ではなかったそうだが、それでも一枚噛んでいるのは確かだった。

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