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ヒゲボーボー?

 モンスター居住区に移り住む以前の生活は、『霊媒』が現実のアスカには夢のようなものだった。喧嘩上等で生きて来た日々を悪夢に近いと感じるところに惨めさが漂うが、夢と思うことで人間でいられた。  悪夢はしつこい。知りたくもない秘密を知るより、理由をこじつけて喧嘩を吹っ掛けた。女扱いされた時は容赦しなかった。そのうちに面と向かって女扱いされなくなったが、陰では続いた。精霊達の声が聞けるのだ。幾らも察せられる。その頃の悔しさを、現実の住人であるはずの男が思い出させた。  アスカは顔に引け目がある。男を象徴するヒゲが生えるのを待ち望んだものだ。山男並みのヒゲボーボーが、アスカの理想だった。  残念ながら体毛の薄さまで母親に似て、ヒゲが生えても貧弱なことこの上ない。伸ばさない方がまだ増しに見えた。野趣な男になろうと、髪を適当に切ったこともある。かえって人気ゲームの主人公に似てしまい、余計に女扱いされるようになった。

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