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大ブーイング?
男は視線をアスカから外した。気持ち背筋を伸ばして、聖霊達が寄り集まる小部屋の片隅を見遣る。男の機嫌を損ねないよう行儀よくしているが、何を期待していたのかは隠せない。それも男は微笑みで受け止めた。
「小雀どもめが……」
男には微笑みに見合った柔和さがあった。しかし―――。
「……またぞろ悪い虫が騒ぎ出したか?」
おかしそうな口調でも、男の声音は切れ味鋭い刃物を思わせる。
「我らが約束、反故には出来まい。さすれば、そなたらの願い、成就せず」
ふと気付いた時には、アソコをビンビンにさせる声しか感じなかった。男は帰った。金も払わずに姿を消した。取り立てに来いというのだろう。テーブルに名刺を残していたが、アスカは見ようともしなかった。
「請求されても行かねぇぞ」
男の古めかしい物言いが頭から離れない。
「俺といちゃつく気がないってだけだろ」
アスカはそう理解し、むかっ腹を立てた。直後、聖霊達の大ブーイングが響き渡った。
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