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撫でた?

「クソったれがっ」  アスカは腹立たしげに呟きながらも諦めたように立ち上がった。何をしようというのかは、精霊達が綺麗にハモって告げていた。 〝シャワー〟  幼い頃には安らぎを感じた彼らの声も、思春期を迎えた頃から鬱陶しさしか感じない。それなのに彼らの楽しげな声が薄暗い小部屋を明るくする。全くのところ、聖霊達とのあいだにプライバシーはないも同然だが、気持ちは沈まない。 「覗くんじゃねぇぞ!」  無駄とわかっているが、アスカは叱り付けるように言った。精霊達の〝ウフフクフフ〟に追われただけだった。  シャワーといえば、水だ。自然界に存在する無生物に宿る精霊は、人工物に宿る精霊に比べて優雅だった。人間の側で息衝く聖霊と違い、噂に飛び付き、騒ぎ立てることもない。だからといって、人間への興味がない訳ではなかった。  アスカが裸でシャワーの下に立ったと同時に声がした。 〝いきり立っている〟  水の精霊の柔らかな響きがアソコを撫でた。

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