モンスターに心酔する者達は確かに多いが、普通の人間にはモンスターへの恐怖が根強く残っている。それを払拭しようとして考え出されたのが、一部地域を開放することだった。モンスター居住区における優遇処置の終了を狙ってのようだが、人間からすれば、だからどうだという話だ。個人では無理でもツアーならと、モンスター居住区を気軽に楽しめる団体旅行に人気が集まるのも頷ける。 　そうした世の中で、個人では無理という普通の人間がアスカの客だ。同業者が人間種社会に留まるのもわかるだろう。そこそこの評判では、まだまだ厳しいのが実情だった。 「オヤジがいなきゃ、この家も高校出たての俺には買えやしない」 　アスカは〝クソマジにヤバい声の男〟の上品な金満ぶりを思い、顔を顰めた。 「あいつら、人狼と違って成金じゃねぇしさ、恐れ入るよ」 　ヴァンパイアには時代の変化は朗報だった。彼らはそれを先導した。一部地域の開放も、彼らが決めたことだった。