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魔法の匂い?

 アスカの家は観光化された地区の外れにある。手軽に持てる別荘として、不動産会社が三軒だけ特別価格で売りに出した物件だった。買い手が付かずに時代が変化し、空き家のまま放置されていたものだ。その一軒を、父親から資金を借りた形にして、アスカが買い取った。  平屋造りのこじんまりとしたこの家には、敷石の短い通路と繋がるように可愛らしいポーチが付いている。芝生を敷き詰めた前庭には、名もない草花が咲き誇り、裏の雑木林の手前まで、色彩を競うかのように芝の緑と戯れている。  アスカはリビングルームを仕事場にして、そこに受付と占い用の小部屋を作った。ダイニングルームにソファを置き、リビングルームと一体型の間取りに替えて、奥の二部屋を寝室と両親の為の客間にした。キッチンもバスもトイレも取り替える必要がなかった。  この家には魔法の匂いがする。可憐で夢見がちな不思議さを損なってはならないのだ。それがアスカには不満でもあった。

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