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気のいいお二人?

 この家を紹介した不動産会社の担当者は、特別価格でも売れ残った理由を、大々的に売り込みを開始した直後に、時代の変化が起きたからだと話していた。造りも値段も豪勢な物件については、殆どが売約済みだった。モンスター居住区に指定され、人の出入りが禁止となったことで、不動産会社が買い戻しをしたが、不動産会社に損はなかった。  ヴァンパイアの財力が、ここでも物を言った。彼らは豪勢な別荘を自分達の住居にしたのだ。ここ何年かは、人狼からも資金が流れている。この二種の争いに、底はないということだろう。それも特別価格の三軒を除いての話だった。最近になって、他の二軒にヴァンパイアと山男が入居したというが、担当者は軽い世間話のように話していた。 〝気のいいお二人ですよ〟  同行する両親を気遣ったのだろう。アスカは引っ越しの挨拶をする羽目になったが、さもありなん、〝気のいいお二人〟との遣り取りは、固く閉ざされたドア越しだった。

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